子ども難民を国外追放から守る マイクロソフトのプロボノ活動

(Photo by Scott Olson/Getty Images)

米マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、2002年に同社の社内弁護士を対象としたプロボノ(ビジネスの経験やスキルを生かしたボランティア活動)プログラムを導入した当時、移民・難民を支援する決断は自然なことだと感じたと振り返る。

「ワシントン州で働く従業員の出身国は157か国に上る。そのため、(支援活動は)会社の従業員層や世界を見る視点にとても合っていると感じた」とスミスは語る。

当初マイクロソフトは、地元の法律事務所と協力してシアトルのみで取り組みを進めていたが、2009年には女優のアンジェリーナ・ジョリーと共同で「弁護を必要とする子どもたちのための組織(KIND)」を立ち上げた。

KINDは、親や法的後見人を伴わずに米国に入国し、一人で国外退去手続きに直面する未成年者の代理人を務める弁護士のネットワークを設立した。2009年、同伴者のいない難民・移民の子どもたちは世界で約6万6000人に上り、そのうち6000〜8000人が米国に入国している。

国連児童基金(ユニセフ)の新たな報告書では、その数は世界中で30万人に増加。米税関国境警備局によると、2016年には米国だけで5万9692人に膨らんでいる。うち約90%が、中米での暴力などを逃れて来た子どもたちだ。

KINDのウェンディ・ヤング代表は「この問題に関わって30年近くになるが、現在のような状況は今までに目にしたことがない」と語る。

米大統領選挙で移民問題が注目される中、増え続ける子どもの移民の存在もより明確に認識されるようになった。スミスは、これによりマイクロソフトの熱意が阻まれることはなかったと話す。

同社は2009年以降、毎年100万ドル(約1億1000万円)を寄付。昨年は149人の同社弁護士がプロボノ活動に725時間を使い、75人の子どもを支援した。移民訴訟1件にかかる期間は8か月から2年ほどだ。

「(トランプが大統領に就任した)1月になって、移民のような問題について公然と意見を述べることがさらに難しくなるだろうと皆が考えていた。しかし、テクノロジー業界はもちろんビジネス界も、自分たちの声を見つけたように思える」とスミス。
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編集=遠藤宗生

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