だが、それでも他社の参入が完全に不可能なわけではない。プロトンが進出する余地はある。そこで吉利は考えた。工場を新設し、中国からサプライヤーを誘致するには数十億ドルの費用がかかる。すでにブランドを確立し、生産施設や国内全域に及ぶ販売・サービス網を持ち、事業を行っている同業(プロトン)の株式を取得する方が、コストを抑えて新製品の開発を行うことができる。
あくまで「支配権」を狙う
プロトン株の49%を取得する吉利は今後、VWやフォード、GMなら選ばないだろう道を進むことになる。株式譲渡に関する契約書に署名した後も、支配権の譲渡に関する協議を継続していくと考えられる。それが、中国のビジネス文化だ。
吉利にはまた、停滞しているプロトンの文化に風穴を開け、いくつもの新型SUVを開発し、消費者の信頼を築いていくことに成功した場合にも、それがマレーシアの自動車購買層やディーラーの多くを占める中国系国民のプライドを傷付けないという強みがある。欧米や韓国のメーカーには、吉利が持つこの生来の強みがなかった。
日本の裏庭に最初に足を踏み入れようとする域外の自動車メーカーが、中国企業になるとは誰が予想しただろうか。日本の各社は容赦なく吉利に反撃するだろう。だが、ボルボを買収し、その再生を実現した吉利の李書福会長は、今後を恐れていない。