ビジネス

2017.06.03

取引額も情熱も「桁違い」 世界のトップ・アートコレクターたち

フランソワ・ピノーがヴェニスに開館した個人美術館、プンタ・デッラ・ドガーナ。


一方、2代目が突如アートに目覚めるケースもある。ウォルマートの創業者サム・ウォルトンの娘アリス・ウォルトンはアメリカ美術のトップクラスの美術館を建てた。そのクリスタル・ブリッジズ・アメリカ美術館はウォルマート本社があるアーカンソー州北西の町にある。筆者も一度は足を運びたいと思いつつ、ニューヨークから飛行機で片道3時間半の距離が悩ましい。

ビジネスでのライバルの構図がアート界でもあてはまるのがLVMHグループの総帥ベルナール・アルノーと、グッチなどを擁するケリングの総帥フランソワ・ピノーだ。

Forbes 400ではアルノーが11位で、63位のピノーを凌駕する。しかし、アートの側面からは、世界最大のオークション会社クリスティーズのオーナーであり、最高峰の現代美術コレクションを持ち、ヴェニスに安藤忠雄が改装を手掛けた個人美術館2館を構えるピノーに軍配があがる。


フランソワ・ピノー(左)は現代美術の最もパワフルなコレクター。

一方のアルノーは、一時業界3位のオークション会社フィリップスをグループ傘下に収めたが数年で手放し、ピノーほどの存在感はなかった。ところが、パリ・ブローニュの森にフランク・ゲーリー設計のLVMH美術館を構えたことで風向きが変わってきた。

実は、パリに美術館を構えることはピノーの長年の悲願だったが、個人美術館の新設を歓迎しないフランス政府がなかなか許可しないことに業を煮やしてヴェニスに美術館を設けたといういきさつがあったからだ。最近マスコミに頻繁に登場するLVMH美術館の話題に、ピノーの心中推して知るべし。

日本からは、ZOZOTOWN社長・前澤友作、大林組会長・大林剛郎、大和プレス代表・佐藤辰美、「ユニクロ」のファーストリテイリング会長兼社長・柳井正の4氏が登場している。

異彩を放つのが前澤氏だ。昨年5月のサザビーズ、クリスティーズでバスキア作品60億円をはじめ2日間で約100億円強を落札した。国内コレクターの多くが目立つことを恐れる中、自分の名前を公表した。世界中が度肝を抜かし、ニュースで報じられた。──二晩にして「世界の前澤」になったのだ。
 
Top 200 Collectorsリストには200通りのストーリーが存在するので、話題は尽きない。

文=石坂 泰章

この記事は 「Forbes JAPAN No.35 2017年6月号(2017/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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