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2017.06.03

取引額も情熱も「桁違い」 世界のトップ・アートコレクターたち

フランソワ・ピノーがヴェニスに開館した個人美術館、プンタ・デッラ・ドガーナ。

アート界でフォーブスの富豪ランキング「Forbes 400」に匹敵するのが、ARTNEWS誌が毎年秋に発表する「Top 200 Collectors」だ。Forbes 400と違って、トップ10圏外の190人にはランキングがない。リスト入りすると画廊の対応は明らかに変わってくる。
 
顔ぶれの中心は欧米だが、近年はロシア、アジア、中近東勢の台頭もめざましい。ロシアでは資源王が多く、その中でも筆頭格はプレミアリーグ・チェルシーFCのオーナーでもある石油王ロマン・アブラモビッチとその3番目の夫人ダーシャ・ズューコヴァだ。20世紀絵画の巨匠フランシス・ベーコンのコレクターとして知られる。


アブラモビッチ夫妻

アジアでは、中国、台湾、香港が目立つ。台湾のコレクターには、ヤゲオ財団のピエール・チェンはじめ電子部品オーナーが多い。
 
ランキングの常連、アート界で「タクシードライバー」の通称で知られる中国の劉益謙(リュウイーチュエン)も健在だ(劉は元タクシー運転手の投資家)。2015年に、当時美術史上2番目に高額な210億円でモディリアーニの傑作を落札し、その名をとどろかせた。劉は落札後に記者会見を開き、その場でアメックスのカードを切るパフォーマンスでおなじみとなった。

欧米のコレクター層は、Forbes 400の顔ぶれとある程度重なる。最近目立つのは、ファンドのオーナーだ。

ハーバード在学中に18歳でファンドを立ち上げたケネス・グリフィンは、15年、現代美術の巨匠ポロックとデ・クーニングの傑作2点を約500億円で購入した。その他にも、SEC(米証券取引委員会)に提訴され、13年に当局に2000億円の和解金を支払ったにもかかわらず、同年150億円を超えるピカソの名作を購入したSAC創業者スティーヴン・コーエン、RJRナビスコの買収で名を馳せたヘンリー・クラヴィス等々……。


ショウビズ界からはレオナルド・ディカプリオがランクイン。実はフランク・ステラから村上隆まで幅広い現代美術コレクター。

2代続けてリストに登場する富豪もいる。GAP創業者故ドナルド・フィッシャー夫妻は、ウォーホルなどの現代美術を所有しトップ10コレクターの常連だった。その息子ロバート&ランディ・フィッシャー夫妻は、ダイアン・アルバースをはじめとする写真コレクションで昨年リストに初登場した。
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文=石坂 泰章

この記事は 「Forbes JAPAN No.35 2017年6月号(2017/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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