待遇の良さと男女平等を体現する「ユートピア」
あまり馴染みのない公務員の給与だが、職員の声からは給与の実態と手厚い研修制度が見える。研修が手厚い組織は特許庁に限らずとも数多くあるが、特許庁職員は往々にしてそれら研修に満足していることがわかる。
──「年収事例:新卒入社 30歳前後 課長補佐級 年収900万。給与制度の特徴:国家公務員の俸給表に基づいて給与が決定されれる。管理職になる40歳くらいまでは、基本給に大きな差はつかず、各々の残業時間に応じて、給料が増減する仕組み。あと数年で1000万の大台は突破できる見込みである(課長補佐級、男性)」
──「特許庁は研修制度が非常に整っており、法律、語学、技術の各方面での自分の成長を感じることができる。また、特許審査官として培った視点を持って知財行政に携わることでユーザーニーズに基づいたより良い知財制度の構築に役立つと考えている。そして、退官後は弁理士として活躍したり、大学で教鞭を執ることで日本の知財制度の円滑化に立場を変えて貢献することができる(審査官、女性)」
そして何より、男社会と思われがちな官公庁において女性の活躍が目立つのも特許庁の特徴と言えるだろう。
──「ものすごく働きやすい。女性だからといって差別されることはほとんどない。女性でも昇進の妨げにならない。出産育児が出世の妨げにならない。女性の先輩が多く相談しやすい雰囲気。上司の奥さんも働いているケースが多く、上司に理解がある。同僚もフラットな関係でよい。女性の人数が部署によってはとても少ないので、注目されるが、悪い意味での注目ではなく、それなりに期待がなされ、それなりに活躍していれば、それなりのポストを与えてくれる(審査部、女性)」
──「大変働きやすく、『理想の職場である』と言って差支えないと思われる。(中略)職務の面でも男女の差はまったくなく、審査官としてやりがいを持って職務に従事することが可能である。評価は完全に職務の内容の難易度と達成度によって客観的に評価されるシステムが整っており、昇進の面についても制度としては全く差がない。実際には、まだ男性の管理職の方が多いものの、女性の管理職も確実に増えており、審査部長にも女性が登用されている。女性の管理職を増加させる数値目標も定められいる。今後、実際の意味においても、男女の差はほとんど完全になくなっていくと思われる。男女雇用機会均等法等の理念をそのままの形で体現するユートピアである(審査部、男性)」
これは私がクチコミを見ている中で感じることだが、「女性だからといって差別されない」という場合は「男性と同様に激務である」ことを指すケースが多い。しかし特許庁においては、男女に限らず職員同士が対等であることが女性の声からも伝わってくる。
男女ともに働きがいがあり、ワークライフバランスの良い環境であることは、すべての職員にとってプラスであるに違いないだろう。
専門性の高い職員が多い特許庁は一般企業とは異なる点も多いが、「お互いを尊重しあえる風土作り」はすべての組織が見習うべきポイントと言えるのではないだろうか。今後、このような「ユートピア」が特許庁だけでなく多くの組織、企業に波及していくことを期待したい。