ジレットの秀逸な「父の日CM」に学ぶ、心つかむ広告の作り方

Credit: P&G


アイデアは秀逸、演出はいまいち

あらゆる質問に回答できる新たな携帯技術を開発したと信じこませ、その裏側にいたのは父親だと明かす、という独創的なアイデアは素晴らしい。ジレットが昨年制作した類似のCMよりもはるかに良い。

昨年のCMでは、息子たちはインターネットを使い、ネクタイの結び方やひげそりの方法を学ぼうとする。なかなかうまくいかないところに父親がなんの前置きもなく現れ、正しいやり方を教えるという流れだ。

私は今年のCMでのサプライズ演出を気に入った。種明かし前の父親の反応と、種明かし直後の息子の反応を捉える洗練された手法だった。

しかしCMには、アイデアに見合ったドラマ性がなかった。CMの中盤で、この「新技術」をどう思うかを息子たちにもっと深く語ってもらう時間を作っても良かったのではないか。そうすればちょっとした緊張感が生まれる。

また、父親が単に部屋に入ってくる種明かしのシーンは、少々ぎこちない。父親を見てもからくりに気付かない息子がいたのも仕方がない。仕切り役のスタッフがドラマ性を盛り上げることもできたはずだ。

例えば、息子に対し、この新技術は人のボディーランゲージを読むアルゴリズムで、ほぼ人間と同等だ、あなたの人生を全て知っているかのようだ、とほのめかす。そこで、父親の肉声を携帯から流し、緊張状態を解放する──といった具合に。

このように、演出には少しがっかりしたものの、アイデア自体は非常に強力で、全体を良くしている。ジレットのCMは、父親が年を取っているだけでなく知識も持っていることを、賢く戦略的に若者に伝えている。

編集=遠藤宗生

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