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2017.05.31

ビル・ゲイツが推薦する「この夏の必読書」5冊とその中身

Photo by CNBC / gettyimages

読書家として知られ、数多くの長文レビューをブログ「gatesnotes」で公開しているビル・ゲイツが、恒例の「この夏の必読書」を発表した。ゲイツの視野を広げる手助けになったという5冊の内容と、ゲイツのコメントを紹介する。(カッコ内の年は英語版の刊行年)

「A Full Life」(2015年)ジミー・カーター著

第39代アメリカ合衆国大統領を務めたジミー・カーターが90年の人生を振り返る自叙伝。カーターは第二次世界大戦以降のグローバル社会のモラルの変遷を率直な言葉で綴り、「世界の様々な地域で憎しみ、敵意、偏見がより受け入れられるようになった」と結論づける。ゲイツはカーターの私的な側面に注目し、「ジョージア州の田舎の水道も電気も断熱材もない家で育った経験が、良くも悪くも、ホワイハウス在任中の彼の業績を形作ったことがよくわかる本」と紹介。

「Born a Crime」(2016年)トレバー・ノア著

米政治コメディ番組「ザ・デイリー・ショー」のホストとして知られる人気若手コメディアンが、南アフリカでの波乱に満ちた少年時代を綴った回顧録。ショービジネスで成功するまでの紆余曲折が、ユーモラスかつ思慮深いエピソードの数々を通して描かれる。「毎晩(ノアの)トークを聞いている人ならわかるだろうが、彼はどんな感動的な話も笑いに変える」とゲイツ。(「犯罪として生まれて」という題名は、異人種間の結婚が違法だったアパルトヘイト時代に、黒人の母と白人の父の間に生まれたノアの出自を指す)

「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」(2016年)J.D.ヴァンス著

米大統領選イヤーの2016年、多くの識者がアメリカの分断について論じた中で、白人労働者階級の実態に最も肉薄した一冊として評価された回想録。著者のヴァンスはオハイオ州の貧しい労働者家庭に生まれ育ち、法律と金融の世界でキャリアを築いた。ゲイツは「貧困の裏にある、複雑な家族や文化の問題の本質に迫る」と評すると同時に、「真に素晴らしいのは著者の物語と、それを語った著者の勇気である」と称賛。

「Homo Deus: A Brief History of Tomorrow」(2017年) ユヴァル・ノア・ハラリ著

ゲイツが昨夏の必読書に選んだ世界的ベストセラー「サピエンス全史」の続編にあたる書。歴史学者でイスラエルのヘブライ大学教授の著者が、人類の脅威がかつての「戦争、疫病、飢餓」から、より形而上学的な問題に変化しつつある現代社会の次のチャレンジを考察する。ゲイツは「ハラリの意見すべてに賛同するわけではないが、彼の人類の未来を見据える目は鋭い」と評価。

「The Heart」(2016年)メイリス・ド・ケランガル著

ノンフィクションを好むゲイツが選んだ唯一の小説は、フランスの女性作家によるもの(フランス語版は2014年刊行)。自動車事故で脳死状態になった19歳の少年の心臓が病気の女性に移植される過程を追いながら、家族や医療関係者の葛藤を通して、死、喪失、青春、癒しといったテーマを描く。ゲイツはレビューの中で「ド・ケランガルによる喪失の悲しみの描写はまるで詩のようだ」と述べている。

編集=海田恭子

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