各社がAIアルゴリズムの向上やバッテリー寿命の改善を目指し、独自のAIチップの開発に乗り出している。ブルームバーグの報道ではアップルもこの流れに追随しようとしているようだ。アップルのこのチップは社内でApple Neural Engine(アップル・ニューラルエンジン)として知られ、顔認識や自然言語認識の分野で活用されるという。
iPhone 7では、アップルが自社設計したA10 Fusionチップが画像関連のAIタスクを担っている。しかし、現状よりもAIに特化したプロセッサを投入できれば、画像認識の速度を向上でき、バッテリー寿命も伸ばすことができる。
ブルームバーグの報道によると、アップルは新たなチップに様々な機能を統合しようとしており、将来発売されるiPhoneのプロトタイプに組み込んでテストを重ねたという。写真アプリでの顔認識や自然言語認識、さらにキーボードの予測変換といったタスクをこのチップに委ねようとしている。
報道ではさらに、アップルが外部のアプリ開発者にこのチップへのアクセスを開放し、様々なAI機能の充実を狙っているという。
これは自然な流れとも言える。テック企業の多くは様々なハードウェア製品を通じ、ディープラーニング等のAI技術の利用を広めようとしている。その中で先頭を走る企業が画像処理のエキスパートのエヌビディア(Nvidia)だ。これまでコンピュータ・グラフィックの生成に用いられてきた同社のGPUは、ディープラーニング・アルゴリズム分野で主要なポジションを占めるようになった。
グーグル、アマゾンらを追撃開始
グーグルも独自のAIチップであるTPU(Tensor Processing Unit)を開発し、 AlphaGo等のプロジェクトで採用してきたが、今後は外部企業向けにグーグルクラウドにTPUを搭載し、次世代のクラウドサービスを打ち出していく方針だ。
現状ではAIサービスの多くはクラウドをベースに作動する。アマゾンやグーグル製の音声操作スピーカーが顕著な例として挙げられるが、ここではディープラーニングのアルゴリズムを活用するために、ネットへの接続が必須条件となる。しかし、処理速度の向上や高度なプライバシー保護が求められる中で、スタンドアローンのデバイス上でアルゴリズムが作動し、学習済みモデルの“推論”が可能なハードウェアの実現が期待されている。
テクノロジー分野の著名アナリストのパトリック・ムーアヘッドは「アップルは人々のプライバシーを守るため、デバイス上で処理を完結させる必要がある」と述べている。対照的に「グーグルは全てをクラウド上で処理しようとしている」という。
アンドロイドスマートフォン向けチップの覇権を握るクアルコムは、Snapdragonプロセッサに多様なディープラーニングのフレームワークを搭載しようとしている。クアルコムはこれらのアルゴリズムを、デジタルシグナルプロセッサで作動させている。
アップルはAI分野においてグーグルやアマゾン、マイクロソフトに遅れを取ったとみなされている。アップルは2011年の時点で音声アシスタントのSiriを投入したが、グーグルのグーグルホーム、アマゾンのアマゾンエコーといった音声アシスタントスピーカー製品で大きく水を空けられることになった。アップルはSiriを搭載した独自のスマートスピーカーを開発中であるとも噂されている。
この件に関しアップルにコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。