北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)が運営するこのアプリは「本日のヘッドライン」を意味する名前を持つが、自社では記者や編集スタッフを全く抱えていない。Toutiaoは人工知能を活用し他のニュースサイトの記事をキュレーションし、配信している。
Toutiaoのアルゴリズムはユーザーの位置情報や閲覧履歴から、個人に最適化した最新ニュースを4000以上の提携サイトから抽出し、配信する。若いユーザーを惹き付けるため、短めの記事も多数用意し、漫画やGIF画像、ストリーミング中継やQ&Aコーナー等の多彩なコンテンツを揃えている。
デイリーアクティブユーザーは8000万人に及び、ユーザーらは一日に平均76分間、このアプリを利用している。App AnnieのデータではToutiaoは中国のiOSアプリストアのニュース部門で1位になっている。
上海の調査企業86 Researchのアナリスト、Zhang Xueruによると「Toutiaoのユーザー滞在時間はフェイスブックのグローバル平均の50分を上回っている」という。
Zhangの試算では広告収入がメインのToutiaoの売上は昨年、8億6900万ドルに達したというが、今年からToutiaoは動画等のオリジナルコンテンツに投資を行っており、黒字化には至っていないという。
投資家らはToutiaoの未来に大きな期待を寄せている。運営元のバイトダンス・テクノロジーの企業価値は、直近の資金調達時に110億ドル(約1.2兆円)とされた。セコイヤチャイナやCCB International、中国建設銀行の投資部門らが同社に資金を注入した。
インド等への海外進出も視野に
同社は2014年にも資金調達を行ったが、当時の評価額は5億ドルに過ぎなかった。創業者のZhang Yiming は34歳で、同社の株式の30%を保有すると伝えられる。
Toutiaoの広報担当者によると、創業者のZhangがニュースのアグリゲーションのサービスを発想したのは2008年のこと。当時、ZhangはSNSサイトのHainei.comの運営を手伝っていた。その頃の中国のネットニュース界は国営メディアが主で、堅苦しい文体で長々とした記事ばかりが目立っていたという。
その後、2012年にToutiaoは始動し、若い世代を中心に急速に支持を獲得した。Toutiaoの成功を目にしたアリババやバイドゥ、テンセントらも、この流れに追随する動きを見せ、各社がパーソナライズされたニュースサイトを立ち上げている。
最近ではテンセントやポータルサイトの捜狐(SOHU)らが著作権問題でToutiaoを訴える動きも起きた。Toutiaoはこの訴えが無効だとして、逆にテンセントらを訴えた。
さらなる成長を目指すToutiaoは、インドやインドネシアのメディア企業にも出資を行っている。また、2月には米国の動画アプリFlipagramを非公開の金額で買収した。
現状でToutiaoが抱える最大の課題と言えるのが、中国政府のメディア規制だ。当局がオンラインメディアの監視を強める中でToutiaoは度々、当局から注意を受けている。Toutiaoのプラットフォーム上にはポルノや違法なコンテンツが掲載される事も度々だ。
Toutiao側は「コンテンツの掲載にあたっては、非常に厳格な基準を設け、内容を精査している」と述べ、人的リソースも投入して努力を重ねている。しかし、数千にも及ぶ外部サイトをパートナーに持つToutiaoにとって、コンテンツの管理は非常に悩ましい問題となっている。