現在41歳のサラ・カウスがスウェルを創業したのは2010年のこと。3万ドル(約334万円)の資金は自身の預金から出した。繰り返し使えて、おしゃれで、多忙なライフスタイルにふさわしい高性能水筒の需要を感じていたカウスは、既存の水筒に勝るものを作れば、使い捨てのペットボトルを買う層をも取り込めると思ったという。
「これまでのマーケットの対象ではなかった、まったく新しい層の関心を惹くことに大きな意義を感じました」
現在、スウェルの水筒は65カ国で販売され、色、サイズ、模様などのバリエーションは200以上。カウスは会社を100%所有しており、その資産額は1億8000万ドル(約200億円)と推定される。カウスはフォーブスの2017年版「一代で富を築いた米国の女性富豪ランキング」の60人には入らなかったものの、極めて近い存在だ。(カウスの代理人は資産額を明かしておらず、フォーブスの推計については「正確ではない」と述べている)
経営に関するカウスのキャリアは長い。フロリダで生まれ、子どもの頃から両親が営む店でアイスクリームを売っていた。コロラド州立大学ボルダー校で会計学を学び、公認会計士として世界四大会計事務所の一つ、アーンスト&ヤングに勤務。その後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得し、起業のチャンスを伺いながら、コンサルティングと不動産業界でキャリアを積んだ。
スタバでの販売開始で急成長
「(会社勤めなどの経験は)無駄ではなかった。これまでの職場で学び、経験したすべてが今の仕事に生かされています」とカウスは振り返る。
スウェルの水筒は、発売後まもなくオプラ・ウィンフリーの雑誌に取り上げられ、売上が伸びた。カウスは収益のすべてを会社に注ぎ込み、商品の大量生産に踏み切った。
「始めの頃は資金不足になることもありましたが、売れるに違いないという大きな自信がありました。自己資金で経営する良さは、融通が効くこと、自信がつくことです。私の場合、当時は養わなければならない子供やパートナーがいなかったし、ローンもなかったからできたのだと思います」