ベビー用品で「資産300億円」の米女性富豪が歩んだ道のり

「カリフォルニア・ベビー」のイベントにて。経営者のジェシカ・イクリソ(左)とカリフォルニア有害物質統制局の局長代理(右)が記念撮影をしている。(Photo by Michael Buckner/WireImage)

妊娠中にベビー用品の成分を調べるようになり、多くの製品に有害な化学物質が含まれている事実にショックを受けた。そして安心して使えるベビー用品を自ら作り始めた——─。聞いたことのある話かもしれない。今や10億ドル企業の生活用品メーカー「オネスト・カンパニー」をハリウッド女優のジェシカ・アルバが2012年に創業したきっかけも、自身の妊娠だった。

それから遡ること約20年、ジェシカ・イクリソイはオーガニックの概念が一般に浸透するはるか前の1990年に妊娠し、ロサンゼルスの自宅のキッチンでベビー用シャンプーを手作りし始めた。1995年、イクリソイは母親から2000ドル(約22万円)を借り、全身用シャンプー1点で「カリフォルニア・ベビー」(California Baby)を立ち上げた。

現在、「カリフォルニア・ベビー」はベビー用品を中心に、90種類ものオーガニック生活用品を扱う年商8000万ドル(約89億円、2016年)の企業だ。製品はホールフーズ、ウォルマート、ターゲットなどの大手チェーンで販売されている。同社を100%所有するイクリソイの推定資産額は、ジェシカ・アルバの2億ドルを凌ぐ2億6000万ドル(約290億円)。イクリソイは5月17日にフォーブスが発表した2017年版「一代で富を築いた米国の女性富豪ランキング」で、59位にランクインした。

借金はゼロ。出資も受けない経営スタイル

「カリフォルニア・ベビー」の成功の理由は、創業から一貫して、イクリソイ本人が製造と経営のほぼすべてをコントロールしてきたことにある。イクリソイの起業目的は安全なベビー用品を作ることだったが、当時はオーガニックの原材料を確保し、市販品よりも効果のあるものを製造することは非常に困難だった。既存の工場やサプライヤーに満足できなかったイクリソイは、2001年にロサンゼルスのダウンタウンに約1400平米の製造スペースを購入。FDA(アメリカ食品医薬品局)のオーガニック認証を受けた、イクリソイによれば医薬品も製造できるレベルの工場を完成させた。

さらには2011年、サンタ・バーバラに40.5ヘクタールの農地を購入し、発疹用クリームや日焼け止めの原材料となるキンセンカ(キク科の一年草)の有機栽培を開始。「Flower and Vine」と名付けられた畑は現在、年間4000本どの生産高を誇る。

イクリソイは経営も自分で行う。「会社のすべてを把握していたいのです。投資家の出資を受ければ、彼らの要望も叶えなければいけなくなります。借金はありません。私のやり方は時代に逆行していると言えるかもしれない」とイクリソイは言う。「自社工場を持つことも同じです。同業他社の多くは製造を外注しているため、(製造技術に関する)知識を持っていません。独自の立場を築いてきた私には、私なりの責任があると思っています」

最近のイクリソイは、会社の拡大と、大人用のスキンケア用品をローンチする準備に追われている。「オーガニック市場が成長し、人々から注目されている今がチャンスです。昔はオーガニック製品の利点を人々に説明するだけでも大仕事でした」とイクリソイは話す。

2人の子供の母親でもあるイクリソイは、後進の女性起業家にとってロールモデルと言える存在だ。「私がビジネスを始めた頃は女性の活躍を目にする機会がなく、男性の成功談を参考にしていました。しかし女性のビジネスに対するアプローチは男性のそれとは異なります。私の仕事に対する姿勢は女性独特のものだと思います」

編集=海田恭子

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