C CHANNEL社長・森川亮が描く新しい日本のカタチ
LINEを世界的な成功に導き、一躍時の人となった森川亮には、現状の地位に満足するという意識は少しもないようだ。50歳を目前にして、突然LINEの代表を辞任。日本の若者に夢を与え、台頭を期するという理由から、新たに着手し始めたのは、未来を見越したメディア事業という予期せぬものだった。森川が立ち上げた女性向け動画ファッションマガジン、C CHANNELが軌道に乗り始めた昨年末、高所得者層の感性を揺さぶる米国発のクレジットカードが日本に上陸した。Mastercardの最上位商品、「World Elite Mastercard」が日本で初めて採用された、ラグジュアリーカードである。金属のステンレスを素材に使用するという大胆さと、秀逸なコンシェルジュサービスで、クレジットカードの常識を打ち破ろうとしている。マーケターとして世界を知り尽くす森川の目に、このラグジュアリーカードはどのように映ったのだろうか。「日本には、典型的な成功者像として、豪邸に住み、高級ブランド品を身につけ、夜は銀座のクラブで一晩に何十万ものお金をつぎ込んで遊ぶというイメージがまだあると思います。実はそれは一昔前、あるいは一部の高所得者の姿で、いま最前線で活躍しているスタートアップの起業家やクリエイターたちはそうしたライフスタイルを好みません。彼らにはお金をどう有効に使うかということのほうが重要なのです。シリコンバレーやロンドンなど海外とつながり、より広い視野に立つことで意識が変わってきているのでしょう。
社会のためになることにどんどん投資しますし、時代の要求に合わせて、自分自身を成長させていくためなら躊躇なく消費行動を起こします。私の周りにもそうした方がたくさんいます。食とかファッションに対しても、新たな可能性を感じさせることに重きを置きます。券面にまでこだわり、このように質感があって、持っているだけで気持ちが高揚するカードをつくるラグジュアリーカードは、彼らにも受け入れられるでしょう」
20代の頃から人々の暮らしをよりよくするサービスを模索してきた森川には、NAVERやLINEでの成功にスポットが当たるが、その陰で多くの失敗も積み重ねてきたという。そこで学んだのは、世の中に存在しない新たな商品を創っても、人々がイメージできないものには価値が生まれないということだった。
2015年にスタートアップしたC CHANNELは、20代の女性をターゲットとしたスマートフォンを利用したネット番組。人口減の影響で、テレビ、雑誌など既存メディアが苦戦を強いられているなかで、森川はなぜメディア事業を立ち上げたのだろうか?
「その理由は非常にシンプルです。まず、日本を元気にしたい。次にメディアを変えたいという思いがありました。20代の女性をターゲットとしたC CHANNELは、その2つを実現するための足がかりになると思ったのです。私はこの媒体を新しい女性誌の形と位置付けています。テレビもいずれ10人に1人しか見ない時代になるでしょう。回線環境が変われば、スマートフォンを利用した番組がテレビの番組に代わりメディアの主役に躍り出ることも考えられます。
20代の女性たちは新たな媒体の誕生に対して、嫌悪感がありません。直感的にアイデアの良し悪しを判断しイメージする力があります。彼女たちなら、ユーザー、あるいは製作側のスタッフとしても、この新たなメディアを盛り上げ、日本を元気にする新たな事業を展開するためのベースをつくってくれると思ったのです。
加えてビジネス的な勝算もありました。私たちの番組は既存メディアをスマートフォンに置き換えてグローバルに展開するという発想なので、日本のみで収益を上げていこうとは考えていないんです。アジアに目を向ければ、フィリピンのように20代の女性が圧倒的に多い国もあります。
まず海外展開を考え、そこから各国のテイストに合わせてローカライズしていくことができれば、アジアのマーケットが非常に期待をもてることがわかってきます。その際、ニッチを狙わず、あくまでマジョリティの人々がイメージできることを意識します。そうすれば、さじ加減ひとつで、ファッション、ネイル、カルチャー、DIYなど多岐に渡って面白い番組がつくれるのです」
C CHANNELは、中国、韓国、台湾、タイなど現在9カ国で展開し、月6億6千万再生という驚異的な数字を叩き出している。森川自身が現地に向かい徹底的にマーケティングを重ねた結果、各国にスタジオをつくり、現地のリアルなトレンドを映し出すことに成功したのだ。アジア各国の人気女優、トップモデルも現地の女性たちのリアルな憧れの対象として番組を盛り上げている。
「アジアの若い女性がつながり、新たなニーズが彼女たちの手で生み出されていく。若い子にとっていままでにない夢のあるメディアになるでしょう」
C CHANNELのさらなる進化を目指す森川にとって、アジアのIT企業やブランド企業は重要な取引先となる。時には彼らを招待し、日本の良さを伝えるのも大切な仕事のひとつだ。そんなとき、ラグジュアリーカードは、森川のような起業家にとって心強いパートナーになるかもしれない。
「日本の和食はいまどの国でも大人気です。そういうお店にアジアの人を連れて行きたいのですが、一見さんお断りのお店だとか、会員でないと入れない料亭などがけっこうあります。お店の価値や品質を保つためだと聞きますが、冒頭で述べた新世代の高所得者と同様に、彼らは食にも精通したエリートたちなので、お店側は有意義な交流の機会を失っていると感じていました。ラグジュアリーカードは、最先端のビジネスシーンをよくわかっているので、そういう人たちのために、ミシュランに載ることすら嫌がる和食の伝統店にアプローチをしています。こうしたセンスが日本の閉塞した部分に風穴を開けていくのだと思います」
マーケターとして、森川はこのステータス性の高いカードがもつ意外な一面も評価している。
「ラグジュアリーカードはアートシーンに力を入れていて、国立新美術館やアートフェア東京にも協賛をしているという話を伺いました。これまでのカード会社とは違った発想で素敵ですよね。こうした既成概念にとらわれない挑戦を繰り返していくことでしか、人々のニーズを敏感に捉え、新たなマーケットを掘り起こしていくことはできないと思うんです」
(左)「ラグジュアリーカード」のブラックカード。表面にマッドブラックステンレス、裏面にカーボン素材を採用したユニークな仕様。年会費10万円(税別)。 (右)スマートフォンの縦型に合わせた見やすさも魅力のC CHANNELのサイト画面。
森川 亮(もりかわ・あきら)◎C Channel 代表取締役社長。1967年生まれ。89年筑波大学卒、日本テレビ放送網入社。99年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程を修了しMBA取得。その後ソニーに入社。2003年、ハンゲームジャパンに入社。07年、NHN Japan(ハンゲームジャパンより商号変更)代表取締役社長に就任。同年、ネイバージャパン 代表取締役社長を兼務。13年、NHN Japanの商号変更により、LINE 代表取締役社長に就任。15年4月より現職。
ラグジュアリーカード
米国で広がる富裕層向けクレジットカード「ラグジュアリーカード」、2016年11月1日、日本初上陸。米国特許を取得した最先端金属製クレジットカード3種類を発行。いずれもマスターカードの最上位にあたる「World Elite Mastercard」を日本で初めて採用している。カードは質感の高い金属製でデザイン性と耐久性を兼ね備えたラグジュアリーな仕様。1枚1枚丁寧にレーザー刻印で名前を刻んでいる。
▷ラグジュアリーカードの詳しい情報はこちら http://www.luxurycard.co.jp
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