「iPhone10周年」の今、グーグルが見据えるパラダイムシフト

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かつて、「テック」という言葉は新しいガジェットを指すことが多かった。その頃のガジェットは、今のように多機能ではなく、電話を掛けるなら携帯電話、道案内が欲しければGPS、ゲームを遊ぶならゲーム機器といったように、1つの用途にしか使えないのが当たり前だった。

コンバージェンスという言葉がもてはやされたが、アドオン機能が搭載されていても中途半端なものばかりで、使いにくいと感じたものだ。今日では、iPhoneやアンドロイドスマホなどのスマートデバイスが普及し、ユーザーはアプリをダウンロードして自分のニーズにあった機能を追加することができるようになった。他人のスマホのホームスクリーンを見れば、その人の特徴や日々のルーチンをかなりの程度把握できるといっても過言ではない。

iPhoneの登場から10年が経った今、我々は再び大きなパラダイムシフトを迎えている。ガジェットの機能やテクノロジーはクラウドに移行し、端末本体はクラウドへの窓口に過ぎなくなっている。先日開催されたグーグルの開発者向けカンファレンス「Google I/O」では、こうした変化が一層浮き彫りになった。

Google I/Oの基調講演では数多くの革新的なテクノロジーが発表されたにも関わらず、派手なガジェットが全く登場しなかったために、一見すると退屈な内容に感じられた。我々は新型ハードウェアばかりに注目して、ソフトウェアのアップデートを二の次と捉えがちだ。筆者は男性誌の編集者を務めた経験があるが、誌面を飾る写真や記事には見栄えの良いガジェットが欠かせなかった。

しかし、今日のテクノロジーの進化は、ソフトウェアのアップデートによってもたらされている。その良い例がグーグルホーム(Google Home)だ。筆者は半年間グーグルホームを使っているが、キッチンカウンターに置きっぱなしの状態ながら、ソフトウェアのアップデートによって機能が格段に進化した。数週間前には、複数のユーザーの声を認識できるようになり、個々のユーザーの好みや予定に合わせたコンテンツを提供するようになった。本体は、白いプラスチックの固まりに過ぎず、豊富な機能は遠方のデータセンターで処理されているのだ。

グーグルが実現する「新しい魔法」

Google I/Oで発表されたソフトウェアアップデートの数々は、魔法としか言いようがないものばかりだ。グーグルレンズ(Google Lens)は、画像認識技術を使ってカメラを検索エンジンに変えてしまう機能で、レンズを被写体に向ければ関連情報を提供してくれる。グーグルが今年発表したテクノロジーの中でも最も素晴らしいものの一つだが、これはグーグルフォト(Google Photos)とグーグルアシスタント(Google Assistant)の機能をアップデートしたことで実現したサービスだ。

今後は、基調講演で派手な新型ガジェットが発表される機会がますます減るかもしれないが、我々を取り巻くテクノロジーは飛躍的な進化を続けていく。また、購入したガジェットの機能に不満を覚えても、嘆く必要はない。ソフトウェアがアップデートされれば、一夜にしてあなたの人生を変えるような魔法が提供されるかもしれないのだ。

編集=上田裕資

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