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2017.05.25

失敗に終わった「アラブの春」、発端の国でも変わらない腐敗体質

Photo by Daniel Berehulak / gettyimages

チュニジアで2010年に起き、エジプトなどにも広がった民衆蜂起「アラブの春」は、腐敗の撲滅と経済的機会の創出を求めるものだった。それらはまだ実現していない。どちらの国でも腐敗の状況は改善しておらず、失業率も2桁台のままだ。

一方、金融市場はそれらを気に留めてもいないようにも見える。2010年以降、チュニジアの株式相場は上昇しており、チュニス証券取引所のTUNINDEX指数は20%近い高値となっている。さらに、エジプトのEGX30指数の上昇率は300%を超えている。

ただし、これらは現地通貨で見た場合の話だ。例えば、ベトナム株の主要な上場投資信託(ETF)の一つ、ヴァンエック・ベクトル・ベトナム(VanEck Vectors Vietnam)ETFは2010年以降、60%近く下落している。

原因は一部エリートの「意識」

「(エジプト首都カイロ中心部にある)タハリール広場に集まったデモ参加者たちは、政府の腐敗や公共サービスを提供する能力の欠如、国内における質の高い機会の欠如について一丸となって声を上げた」

「彼らは特に、弾圧と(市民に)政治的権利が認められないことに抗議した」

ダロン・アシモグルとジェームズ・A・ロビンソンは共著「国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源」の中で、こう書いている。

著者らはエジプトが貧しい理由について、「限られたエリート」たちが国民ではなく自らの利益拡大ために国を統治してきたからだと説明する。

そして、「…政治的権力を持つ一部の者だけが、富を得るためにその権力を使ってきた。ホスニ・ムバラク元大統領に700億ドル(約7兆7800億円)もの蓄財が可能だったことが、そのいい例だ。国民がまさに痛感しているとおり、敗者となってきたのは常に、国民だった」

チュニジアでも状況は同じだ。両国ともに政府の腐敗を巡る状況は悪化を続け、失業率は上昇を続けている。国際非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルが発表した「2016年腐敗認識指数」では、チュニジアは175か国中75位。エジプトは108位だった。また、世界銀行によれば、両国はビジネスを行うのが難しい国にも名前が挙がる。

腐敗体質を改善し、失業率を低下させ、ビジネスがしやすい国にするという点で大きな変化をもたらすのに、(アラブの春から現在までの)7年という期間が十分とはいえない。だが、問題はこれらに関する状況を示す数値が悪い方向に向かっていることだ。革命はまたも、無駄に終わったということを示唆している。

そして、失敗の理由は相変わらず同じだ。新政権もまた、国民全体の利益ではなく自らの利益を優先するという、昔ながらの政治手法を維持していることだ。

編集 = 木内涼子

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