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2017.05.24

GMが「有望な」インド市場に背を向けた理由

2012年、インドでのイベント。GMとGM Indiaのトップ達がシボレーの前で記念撮影をしている。(Photo By Sonu Mehta / Hindustan Times via Getty Images)

ゼネラル・モーターズ(GM)は5月18日、インドで行ってきた「シボレー」ブランド車の販売を年末までに中止すると発表した。インドでの市場シェア拡大を目指してきた同社だったが、目標達成は難しいと判断した。

同社は現在、インド国内に2か所の生産施設を持つ。そのうちマハラシュトラ州タレガオンにある工場は今後も稼働を継続。メキシコや南米、中国などへの輸出拠点とする。一方、グジャラート州ハロルの工場は、インドでの合弁パートナーである中国の上海汽車集団(SAICモーター)に売却する方針だ。

シェア拡大に失敗

インドは向こう10年以内に、日本を追い抜き世界で3番目に大きな自動車市場になると見込まれている。インドの自動車の販売台数は昨年、前年比9%増を記録、年間300万台を超えた。一方、自動車の普及率は極めて低く、2015年の時点で1000人当たりわずか32台となっている。

つまり、同市場には大きな成長潜在力があるということだ。米ゴールドマン・サックスによると、自動車販売台数は2025年までに、昨年の約300万台から2倍近くに増えると予想される。だが、この市場に予想される成長から恩恵を得るためには、コストがかかる。GMは、そのコストに見合った利益を得ることはできないと結論付けたのだ。

GMとSAICは50億ドル(約5557億円)を投資してインドでの生産を計画。年間約200万台の生産と、インド国内での販売、新興市場への輸出拡大を目指してきた。2015年にはインド市場でのシェアを2020年までに3%に引き上げるとの目標を明らかにしたが、同社のシェアは今年3月末時点で1%以下にとどまっている。

問題は多大なコスト

こうした状況を受け、米国内での経営戦略に多くの選択肢を持たないGMは、インド事業について再検討した。同市場について問題視したのは、シェア拡大にかかるコストが非常に高いことだった。

GMはインドで新興市場向けの低価格で競争力あるモデルを生産していく計画だったが、インドの消費者に人気のモデルはGMが手掛けるタイプとは異なる。ニーズに合わせてプラットフォームを変更すれば、多大なコストが生じる。

さらに、GMは販売台数の引き上げよりもマージンの拡大を重視する方針に変更している。プラットフォームの変更は、同社全体としての戦略に反するものとなるだろう。

一方、インド事業については、撤退以外にもう一つの選択肢があった。地元企業との提携により、同国での事業運営を任せることだ。だが、それでは製造や設計、マーケティングに至るまで、あらゆる点で意思決定における実権を失う可能性がある。利益を上げることができなかった場合には、GMのブランドイメージが損なわれる危険性もある。

手元に残す生産能力が年間13万台のタレガオン工場を輸出拠点とすることに決めたのも、これらを受けての判断だ。

編集=木内涼子

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