「AIを民主化」するスタートアップ マイクロソフトらも支援

Bonsaiのロゴ(Courtesy of Bonsai)

カリフォルニア州バークレーに本拠を置くAIスタートアップのBonsaiが目指すのは、「AIの民主化」だ。TensorFlow、MXNetなどの機械学習やディープラーニングのフレームワークに比べて、導入が格段にシンプルなのが特徴だ。

「AIの民主化」というスローガンは、AIツールを提供する多くの企業が掲げているが、Bonsaiを使えば社内に機械学習に通じたデータサイエンティストがいなくてもAIテクノロジーを導入できる点が他社と大きく異なる。

事業者がAIを利用する際には、主に2つの選択肢がある。1つは、マイクロソフトやIBM、グーグルなどの企業が提供するAPIを活用すること。もう1つは、TensorFlow、Cognitive Toolkit, MXNet、Theanoなどのローレベルなフレームワークを導入することだ。

前者はよりシンプルだが制約が多く、汎用性が乏しいのが難点だ。後者は、フレームワークやツール、導入するためのワークフローなどについて深い知識が求められる。Bonsaiは両社の中間に位置するツールで、複雑さを排除しつつ、適度なカスタマイズができる。

Bonsaiの共同創業者でCEOのMark Hammondは、現在のAIプラットフォームの置かれた状況が、データベースが登場したての頃とよく似ていると指摘する。初期のデータベース管理システムでは、顧客がファイルフォーマットやクエリ実行計画、クエリ最適化などに関する知識を持っている必要があった。その後、ANSI SQLが登場し、ACID特性が遵守されるようになって標準メカニズムが確立された。これまで、AIテクノロジーを活用するには専門的な知識や経験が求められたが、Bosaiはソフトウェア開発者なら誰でも利用できる手軽なツールを開発した。

約15億円をマイクロソフトらから調達

Bonsaiは、他のAIプラットフォームとは根本的に異なるアプローチをとっている。Bonsaiのプラットフォームでは、「Inkling」という独自のプログラム言語を用いて、「BRAIN(Basic Recurrent Artificial Intelligence Network)」と呼ばれるハイレベルなモデルを生成する。BRAINは、BonsaiのAIエンジンで管理され、プロジェクトに適したローレベルなモデルにするためのトレーニングが行われる。

BonsaiのAIエンジンは、「architect」、「instructor」、「learner」、「predictor」という4つのコンポーネントで構成され、architectがトレーニングに最適なアルゴリズムを選択し、instructorが既存データやシミュレーションデータを用いたトレーニングプランを設計する。learnerが十分なトレーニングを実行するとpredictorモードがデプロイされ、ライブデータに対する予測を行うことができるようになる。

Bonsaiは最近、マイクロソフト・ベンチャーズ(Microsoft Ventures)とNew Enterprise Associates (NEA)などから760万ドルを調達した。これで、Bonsaiがこれまでに調達した総額は1360万ドル(約15億円)に達した。同社の株主には、ABB Technology VenturesやSamsung NEXT、シーメンスなどが名を連ねる。現在、Bonsaiのプラットフォームは、限定した顧客に対して初期バージョンが提供されている。

編集=上田裕資

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