神武天皇元年からの歴史を持つ鹿島神宮が発行したクレジットカード。その入会者の3割が会社経営者や役員というエグゼクティブだということには、鹿島神宮が崇敬され続ける”本当の理由”が隠されている。通常、メディアに向けて直接語ることのない、鹿島神宮・宮司の鹿島則良氏が、鹿島神宮が日本のリーダーに崇敬されてきた真の理由を語る。聞き手は、「鹿島神宮カード」の実現に尽力し、事務局の代表を務めるマルチプロデューサーのレーサー鹿島氏。
― 「鹿島神宮カード」入会者の3割は、会社経営者や役員という優秀なビジネスパーソンです。鹿島神宮が源頼朝、徳川家康、秀忠をはじめとする武将や政(まつりごと)を司る日本のリーダーたちに崇敬されてきた最大の理由はなんでしょうか?
「神道では特に古い時代においては、自然を抜きにしては神は存在しません。天照大御神(あまてらすおおみかみ)と言えば太陽の象徴、大国主命(おおくにぬしのみこと)と言えば、大地の象徴、では、鹿島の神、武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)はと言うと、太陽と言う宇宙のパワーを真っ先に受けて、万物を発展、成長させる"鹿島立ち"の神であり、いうならば宇宙規模の力の神様なのです。古事記にある国譲りの場面では、出雲の大国主命の子供、建御名方神(たけみなかたのかみ)と力比べをして、赤子の手をひねるかのような圧倒的な力の差で武甕槌大神が勝ったと記されています。大国主命の子供は大地の力の象徴で、武甕槌大神は宇宙のパワーの象徴。大地の力は宇宙の力には叶わないという自然界の法則が神話として語られているのです。
平安時代までは、神宮という最高位の社格は、伊勢神宮、香取神宮(千葉県香取市)、そして鹿島神宮の3つしかありませんでした。この東の辺鄙なところに神宮が2社もあったことは、太陽が昇る方位が非常に重要視されたということを表しています。太陽がスタートするような宇宙の気が出るとき、現代で言えばロケットを飛ばすとき、組織を作るときには大きなエネルギーが必要で、それをバックアップするすごい力の神様が必要であり、その力を持つ神様として崇敬されてきたのが鹿島の武甕槌大神です。力が弱い神様だったら吹き飛ばされてしまいますから。
史実として歴代の日本のリーダーに崇敬されてきた記録が残っており、いまでも日本のリーダーとなるみなさんは鹿島神宮にお詣りされています。近代では1962年に住友金属工業が鹿嶋市に製鉄所を作るにあたり、当時副社長だった日向方齊氏が鹿島神宮でおみくじを引き、最後の決め手にしたという資料が残されています」
鹿島則良宮司から、東日本大震災時に本殿の千木が落下した際、古くからの規則に従い天皇陛下に奏上した逸話も語られた。
― この寄付のカードを着想したきっかけは、ある神社が敷地内にマンションを建てて、その定期借地権収入で式年行事の斎行費用を賄うというニュースを目にしたことでした。そこで、三越伊勢丹グループが近年力を入れている、日本のものづくりや伝統の素晴らしさを見直し継承していく助けになればという活動の一環として、これまでにない仕組みが始まりました。
「このカードのお話をいただいたときは、前回の御船祭が終わったばかりのタイミングでちょうど次回のことを考えていたときでした。御船祭は2000年続く、12年に1度のお祭りで、日本の国には長い歴史があり、そのなかで鹿島神宮の武甕槌大神と香取神宮の経津主神(ふつぬしのかみ)が、この国ができるときに活躍されたことをみなさんにしっかりと伝えるための大切な祭りです。この斎行費用として、いままで頂戴している寄付金のほか、何か安定的なことはないかと検討していたところに、クレジットカードの業界では初めての試みはどうかとお話をいただいた。
鹿島立ち(=旅立ちや門出の意)という言葉があるように、日本建国以来、全てのことは鹿島から始まったという歴史があります。神社初の試みなのであればぜひ鹿島神宮からという思いで、これは凄いな、いいな、と感じました。そしてカードが発行されますと、受け取った方からの声として、鹿島神宮でお祓いを受けたカードをお財布に入れていることで鹿島の神様が身近におられるように感じる、と。ポイント寄付への返礼品としては神宮の中で育った杉を使用した銘々皿をお贈りしますが、これもまた素晴らしいことだと思います。鹿島神宮を身近に感じていただいて、また鹿島へ行ってみようという気持ちになるのはありがたいなと思っています」
鹿島神宮本殿。1619年に徳川2代将軍である徳川秀忠が寄進。徳川家康が寄進した旧本殿は場所をうつし、現在の奥宮に。
ー このところ、三が日の参拝者数は増加傾向で、特に女性の参拝者がここ数年で急増しているようですが、その背景には何があるのでしょうか?
「戦後、GHQによる占領期には神社を参拝してはいけない、神話を語ってはいけないという規則がありましたが、その呪縛がようやく解けてきたと感じています。日本の長い歴史の中で今日があることや、日本人であることを誇りに思える時代になってきたことが大きいのでは。また、誰を信じて誰を頼ったらいいのかということが分かりにくい時代になってきまして、日本人の心の中にある、神社や神様という何千年の歴史の中でずっと信じられてきたことの大切さに、みなさんが気がつかれてきたのではないかとも思います」
インタビューには宮司の鹿島則良氏とともに、鹿嶋市の観光協会副会長を務め、地域活性化にも尽力する、鹿島神宮権宮司の東 俊二郎氏も同席。
ー「鹿島神宮カード」の寄付を通じて、利用者は御船祭や文化財の保護継承に使っていただくという感謝の気持ちを表し、そのかわりに神様からエネルギーを授かり、新しいことを始めるときや悩んだ時に支えていただく。また一方で、鹿島神宮を維持して、国を守る、人々を守るための費用の一部にそれが充てられるという、これまでになかったWin-Winの関係になることを期待しております。
「その通りですね。ぜひ鹿島神宮にもお詣りいただいて、鹿島の神様の強い力を授けていただいて、それが仕事の上での決断力とか指導力とか、世の中に役立てればいいのかなと思っていますよ。神様には、毎日のご奉仕の中でよくお願いしていきたいと思います。」
▷「鹿島神宮カード」の詳細はこちら
http://www.micard.co.jp/card/ksm/
レーサー鹿島◎放送局のアナウンサー、プロデューサーを経て、国境やジャンルを超えたマルチプロデューサーとして活動。一流企業や有名ブランドの新規ビジネスモデル、異業種間コラボレーションの構築なども手掛ける。2001年から米国LAを拠点にINDYライツなどに参戦したレーシングドライバー、アスリートの顔も持つ。