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I cover the intersection of business, health and public health.

Pressmaster / shutterstock.com

1980年代以降、子供の運動量が低下する一方で、肥満傾向が拡大している。この状況は親たちだけでなく、子供を持たない人々にとっても深刻な社会問題をもたらす。

米スポーツ・アンド・フィットネス産業協会(Sports and Fitness Industry Association、SFIA)では、1回25分間、消費カロリーの多い運動を週に3回行う運動量を「活発〜健全なレベル」と定めているが、近年この水準に達する子供の数は3分の1にも満たない。一方で、友達と外へ出かけて運動する代わりにパソコンやスマートフォンをいじる時間が増えており、CNNの報道によると、1日に9時間(1週間で63時間)をテレビやソーシャルメディアなどに費やしているという。

体重の増減には運動だけでなく食事も大きく影響するが、米科学誌「プロス・ジェネティクス(PLoS Genetics)」に最近掲載された研究結果では、「運動は遺伝的に肥満傾向のある人にとっても効果がある」というデータが示されている。また、複数の研究機関によって遺伝的に肥満傾向がある子ども20万人以上についてのメタ分析が行われており、運動が減量に効果的であることを確認している。

では、前出の“SFIAが推奨する運動量レベル”に満たない子供の増加が社会に与える影響とどれほどのものなのか? それを試算するため、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院はカーネギー・メロン大学などが運営するピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センターと共同で、全米の子どもを想定したコンピュータ・シミュレーション・モデルを開発した。

「肥満予防のための仮想集団(VPOP)」と名付けられたこのモデルでは、米国のすべての子どもたちの性別、年齢、人種・民族、居住地などの属性を反映したバーチャル・チルドレン数百万人を想定。それぞれの代謝モデルを設定し、毎日どの程度運動するかはそれぞれが「自分で」決定することとした。その結果はカロリー消費量のデータとして蓄積され、体重の増加など健康状態の変化とそれに伴い発生するコストを試算することができるようになっている。

VPOPシミュレーション・モデルによるいくつかの試算結果が、ジョンズ・ホプキンス大学のニュースセンター「ザ・ハブ(The Hub)」で公表されている。SFIAの推奨する「活発から健全なレベル」に達する子どもの割合が現状の3分の1から50%に引き上げられるだけで、肥満と過体重の子どもの数は4.18%減少した。さらに、運動レベルの向上により、直接医療費が年間81億ドル(約9030億円)削減され、生産性の損失は年間138億ドル抑制された。

さらに、運動量が推奨レベルに達する子どもの割合を75%と仮定すると、直接医療費は166億ドル減少し、失われる生産性は236億ドル削減することができた。仮にすべての子どもたちが推奨レベルの運動量をこなすなら、標準体重を超える子どもは14.89%減少し、直接医療費は263億ドル削減され、抑制できる肥満に伴うコストは360億ドルになると試算される。

こうした負担を背負っているのは誰だろうか──? 国民全員だ。必ずしもそうは言えないとしても、少なくとも税金や医療保険の保険料を支払っている人たちには負担がかかっている。また、勤労者の生産性の低下は、国全体のビジネスにも悪影響を及ぼす。子どもの運動量は勤労者の生産性、すなわち国の経済と密接に関係しているのだ。

子どもの運動不足は、決して他人事ではない。国家の問題として十分に取り上げてこられなかったことが、結果として国民全員がその代償を払わされることにつながっている。対応するためのさまざまなプログラムやイニシアチブに対する投資が、社会全体の大幅なコスト削減につながるのは間違いない。

編集=荒川伸次

 

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