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2017.05.19 17:30

今年のカンヌ映画祭に注目する「5つの理由」

第70回カンヌ映画祭のオープニング上映に登場した(左から)主演のマチュー・アマルリック、監督のアルノー・デプレシャン、出演者であるマリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、シャルロット・ゲンズブール、イポリット・ジラルド、アルバ・ロルヴァケル(Getty Images)

5月17日(現地時間)、第70回カンヌ国際映画祭が開幕した。オープニング作品は、フランスを代表する映画作家の一人、アルノー・デプレシャンの『イスマエルの亡霊』(原題)。マリオン・コティアール、シャルロット・ゲンズブール、ルイ・ガレルという人気も実力も兼ね揃えた俳優たちが共演するとあって注目度も高く、華やかに幕を明けた。

毎年、現代的な論争が巻き起こるカンヌ映画祭。記念すべき70回目の今年はどんな議論が巻き起こるだろうか。以下に注目したい5つのポイントを紹介しよう。

70回記念の特別イベント

第1回目のカンヌ映画祭が開催されたのは、第二次世界大戦終結後の1946年のこと。60回目の記念の年には、ヴィム・ヴェンダース、ウォルター・サレス、チャン・イーモウ、北野武といった世界の巨匠たちが映画、そして映画館への愛を込めたオムニバス映画「それぞれのシネマ」を製作するなど、毎回、節目の年にはスペシャル企画が登場する。

今年も、映画祭終盤でデヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス」の続編(25年ぶり!)の一部が上映されるなど、特別な企画が用意されている。

キーワードは「女性」?

2015年、正装が義務づけられている公式上映で、フラットシューズを履いた女性が入場拒否されたことに端を発した“ハイヒール論争”は記憶に新しい。また毎年、コンペティション部門に選出される女性監督の作品が少ないこと、そしてパルム・ドール(最高賞)を受賞した女性監督がいまだ一人しかいないことなどは、必ず話題に上る。

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こうした流れを受けてか、今年の審査員(写真上の9人)たちのなかには、例年以上に“才女”というイメージの強い女性たちが選ばれている印象を受ける。

ドイツ出身のマーレン・アデは、昨年のカンヌ映画祭で上映された『ありがとう、トニ・エルドマン』(6月24日、日本公開)で一躍“時の人”になった女性。フランスのアニエス・ジャウイは、女優、脚本家、監督として90年代後半から2000年代前半にかけて広く名前を知られるようになった人物で、近年多くの作品を発表しているわけではないが、フランスではいまだ“才能ある女性”の象徴となっている。

新興ネットメディアの台頭

今年は、韓国の鬼才ポン・ジュノ、アメリカのノア・バームバックの新作の2作がオンラインストリーミングサービス「ネットフリックス」オリジナル作品としてコンペ入りを果たした。しかし、フランスで劇場公開の予定がない作品がコンペに選ばれたことに対しては反発も多く、映画祭側は来年以降、劇場公開の予定がない作品はコンペにエントリーできないよう規定を変更した。

審査委員長のペドロ・アルモドバルも、「パルム・ドールに選ばれる作品は劇場公開されるべき」といった趣旨の発言をし、映画祭初日から議論を巻き起こしている。

本気の“伝記映画”に熱視線

映画において“伝記もの”は思いのほか多く、一つのジャンルを築けるほどの作品が存在する。カンヌ映画祭でも毎年多くの作品が上映されているが、今年の注目はなんと言ってもフランスの実力派俳優ルイ・ガレルがジャン=リュック・ゴダールを演じる『Le Redoutable』だ。アンニュイな雰囲気が魅力のガレルがゴダールになり切った姿を披露したポスターは人々に衝撃を与えた。

コンペにはもう一本、フランスの巨匠ジャック・ドワイヨンが彫刻家オーギュスト・ロダンの生涯を描いた作品が選出されており、期待が高まる。

日本映画にも注目!

コンペ部門には“カンヌの申し子”とも言える河瀬直美監督の『光』(5月27日、日本公開)が、「ある視点」部門には、フランスにも熱狂的なファンの多い黒沢清監督の『散歩する侵略者』(9月9日、日本公開)が選出されている。どちらも、今週末から来週の始めにかけてカンヌでお披露目される。

批評家週間では、寺島しのぶ主演の『Oh Lucy!』が選出された。監督の平柳敦子は、ニューヨーク大学大学院映画制作学科シンガポール校卒の新鋭監督。現地でどのような評価を受けるか、注目が集まる。

文=古谷ゆう子

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