殺人や自殺中継に悩む「フェイスブックライブ」 大手企業も撤退へ

Dusit / shutterstock

フェイスブックのライブ動画配信プラットフォーム「フェイスブックライブ」に問題が多発している。投稿される動画がリアル過ぎるコンテンツと、リアルさに欠けたコンテンツの両極端に分かれているのだ。

殺人や自殺が配信される一方で、静止画像など「動画」ではないコンテンツが多数配信されている。フェイスブックにとって後者への対処は比較的簡単で、同社は先日、開発者向けのプラットフォームポリシーに「APIを使って画像(静止画、GIFアニメ、ループ画像)や、定点動画を用いた投票コンテンツの配信ができるようにしないでください」という一文を追加(編注:日本語ページにはこの項目はない)。

また、録画コンテンツとライブコンテンツを明確に区別するように促し、区別しない場合はコンテンツの公開範囲を制限すると警告した。

静止画を使ったカウントダウン動画や投票コンテンツが問題なのは、単純にコンテンツとしてつまらないからだ。それらが増えると、ユーザーは遠ざかる。フェイスブックが求めているのは、昨年大人気になった「チューバッカ・マム」(『スター・ウォーズ』キャラクターのマスクを被った主婦が爆笑する動画)のように、生々しく予測不可能なコンテンツなのである。

「フェイスブックライブ」はフェイスブックの社運がかかったプラットフォームだ。マーク・ザッカーバーグも述べているように、今や画像や動画はテキストを凌ぐ情報伝達手段であり、特にライブ動画の価値はますます高まっていくだろう。昨年の今頃、同社はライブ動画には録画動画の3倍の視聴者がいるという理由のもと、ニュースフィード上でライブ動画を先に表示するようになった。

有力メディアとの提携も終了の方向で

しかし現状は、期待していたほど伸びていない。昨年一年間、フェイスブック社はライブコンテンツの市場を拡大するために、著名人や大手メディア企業にライブ動画の配信を依頼し、対価を支払った。動画の途中に挿入される広告の収入は、投稿者とフェイスブックに分配されている。現時点では、視聴者の多くが嫌がる再生前の広告は導入していない。

動画コンテンツの分析を行うTubularによると、昨年夏の時点で「フェイスブックライブ」のユーザーは約50万人。また、ニューヨーク・タイムズ、バズフィード、ワシントン・ポストといった有名メディアとの契約期間は終了しつつある。

「フェイスブックライブ」の存続に広告収入は必須である。だが、殺人や自殺の瞬間が表示されるサイトに広告は集まらない。数日前にも、テネシー州メンフィスの男性が焼身自殺する様子が配信されたばかりだ。

フェイスブックは先日、暴力的な動画を削除するスタッフとして、1年以内に3000人を新たに雇用すると発表した。しかし完全に監視するには、配信者とほぼ同数の監視スタッフが必要であり、その体制の実現は非現実的だ。

フェイスブックがライブ動画配信で収益を上げることを望むのなら、せめてAIが不適切なコンテンツを検出できるようになるまでは、投稿者を限定するほかないのかもしれない。それまでこのプラットフォームが続けばの話だが。

編集=海田恭子

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