東大卒「代表取締役医師」のキャリアチェンジと仕事術

豊田剛一郎 メドレ代表取締役医師 (photographs by yOU)

医師・研究者、コンサルタントを経てスタートアップの代表になった豊田剛一郎氏。特異なキャリアは目指すべき進路が見えていたから。アメリカ留学や仕事を通して得た大切な指針について語ってもらった。


2015年2月より、医療系スタートアップ「メドレー」に参加し、共同経営者に就任しました。500名を超える医師が、医療情報を共同編纂するオンライン病気事典「MEDLEY」や、PCやスマートフォンでのオンライン診療を実現する「CLINICS」などを展開。患者やその家族と医療従事者がともに「納得できる医療」を実現することを目指しています。

肩書の「代表取締役医師」が示すとおり、私はもともと医師でした。「大胆なキャリアチェンジ」といわれることも多いですが、いまは会社という枠組みがこれだけ多様化している時代。スタートアップにいったからといって、今更アウトローな人だとは思われません。大事なことは3つ。「やりたいことは何か?」という意志。「やるべきことは何か?」という使命。「自分だったらできることは何か?」という自信。

半分思い込みでもいいんです(笑)。そういう3つの軸を持って会社や進路を選べば、迷いも起きないし、その過程でさまざまな経験を積むことで、「自分の何をどう生かして社会に還元すべきなのか」という思いに辿り着くことができる。私にとっては、その3つの軸が重なっているのが、メドレーなのです。

アメリカのChildren’s Hospital of Michiganに留学し、米国医師免許を取得したのも、「自分ならできる!」と自身を煽って進んだ道です。真冬の日照時間が8時間しかない土地で、仕事の後、スターバックスで医師免許取得のための勉強をするという生活を4カ月ほど続け、珍しく鬱々としかけました。

そんな自分を救ったのがサッカーです。地元のサッカーチームに入会し、毎週末サッカーをやることで、メンタルを含めて健康になりました。東アメリカ地区の20チームのトーナメントでMVPを授与されたことも、現地駐在員やアメリカ人と友人になってアイデンティティについて熟考できたことも、良き経験であり思い出です。

仕事の進め方で心がけていることとしては、優先順位はあえてつけないようにしています。やることすべてが重要なので、緊急度は考えますが、重要度は考えない。
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堀 香織 = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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