そんな情報を確認できたのは、マイケル・フリンがトランプ政権の大統領補佐官(安全保障担当)を辞任した2月のことだった。
駐日ロシア大使と東京で接触したのは、「ロシアゲート」疑惑の張本人、マイケル・フリン当人である。フリンは、2016年10月11日に来日。菅義偉官房長官と会談し、自民党本部で講演も行っている。大統領選挙戦の最中だった当時、フリンはトランプ側から軍事顧問を任せられており、選挙中もトランプのアドバイザーとして活動していた。
彼が駐日ロシア大使と面会したのは、麻布にあるロシア大使館内ではなく、外だ。おそらく人目を避けたのだと思われる。
その後、選挙戦に勝利した後の12月29日、フリンはキスリャク駐米ロシア大使と複数回電話をした。ロシアへの制裁について、トランプ政権がどう対応するかを話していたことがのちに発覚する。
当初、フリンは「電話の内容は、クリスマスの挨拶程度」とロシアとの癒着を否定していたが、今年2月になり、「制裁の話題が絶対になかったという確信はない」と前言撤回。あえなく辞任となった。
かつてアメリカ陸軍中将であり、DIA(国防情報局)長官まで務め、晴れてホワイトハウスで大統領補佐官になったフリンは、いまやFBIの捜査対象者である。まだ民間人だった昨年の段階で、政府の許可なく外交に関与したローガン法違反の疑いをかけられている。
東京でもロシア政府側と接触していたという話を聞いた時、筆者は僭越ながらこう思った。
「案外、マヌケな人なんだな」
簡単に「行動確認」されているのが意外だったのだ。
そして12月に駐米ロシア大使との電話協議が報じられた時はこう思った。
「マヌケじゃなくて、大マヌケな人なんだな」
相手は、大統領選挙中にアメリカ民主党本部にサイバー攻撃を仕掛けていたと批判されているロシアの、しかも大使である。盗聴されていないわけがない。対立するテーマが複数あるのだから、日ごろから大使が誰と会い、誰と話しているかをマークするのは情報機関の日課である。「クリスマスの挨拶程度」という釈明を撤回せざるをえなかった決定打も、捜査機関の盗聴だったと報じられている。