ビジネス

2017.05.21 15:00

「街をフィールドに変える」スポーツで観光客誘致

コースは半蔵門から渋谷スクランブル交差点まで! 世界中のゴルフプロが参加する大会を、東京のど真ん中で。


破天荒なマラソンでは、フランス・ボルドーで行われるメドックマラソンというのがある。ブドウの収穫直前、広大なブドウ畑と20カ所以上の醸造所を結ぶフルマラソンの大会で、なんとワインを飲みながら走れる(笑)。ランナーは「カーニバル」「SF」など毎年の公式テーマに沿った衣装で臨む。優勝商品は自分の体重と同じ量のワイン。世界中から約10000人が参加するというから、これはいま流行の兆しを見せるガストロノミー・ツーリズムのはしりといってもいいかもしれない。
-->
advertisement

日本ではさすがにないかと思っていたら、東北日本酒フェスティバルの一環で東北風土マラソンというのがあった。完走したランナーには利き酒チケットが渡されて、東北各地の数十銘柄の日本酒を楽しめる。飲みながらではないけれど、充分に楽しめるし、観光客誘致にも繋がっているのだろう。

「ヘルスツーリズム」という新しい旅
 
ところで僕はこれからの観光には「健康」という視点がもっと注目されると思う。すでに「ヘルスツーリズム」という言葉もある。

京都市は10年、「歩くまち・京都」憲章を定めた。これは「わたしたちの京都では、市民一人ひとりは、1. 健康で、人と環境にやさしい、歩いて楽しい暮らしを大切にします。そして、市民と行政が一体となって、1. だれもが歩いて出かけたくなる道路空間と交通を整え、賑わいあるまちを創ります。1. 京都を訪れるすべての人が、歩く魅力を満喫できるようにします」というもの。本憲章により、京都市民はまず自分たちがよく歩くようになり、それによって健康になる。次に観光客のために家の前を掃除するようになる。
advertisement

行政がお金をかけて街を整備するのは簡単だ。それよりも市民の意識を変えるほうが街は魅力的に変貌する、という最良のケーススタディではないだろうか。特に京都は路地裏に個人商店がたくさんあって、歩くのがいちばんおもしろいと個人的にも思う。公共交通を使いましょうというキャンペーンの一環で、歩くまち・京都アプリ「バス・鉄道の達人」というのもできた。健康になるためにも、ぜひ京都へおこしやす。


小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。エッセイ、作詞などの執筆活動の他、熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わっている。

イラストレーション=サイトウユウスケ

タグ:

連載

小山薫堂の妄想浪費

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事