モバイル決済額は爆発的に拡大しており、北京のコンサル企業Analysys International(易観国際)によると2016年には1兆8500億ドル(約210兆円)にも上った。最も勢いがあるモバイル決済アプリがアリババ系列の「アリペイ」とWeChatを運営するテンセントの「WeChatペイ」だ。
現金なしでどこまで通用するのか、筆者は北京で試してみることにした。まずは朝食だ。屋台で売っていた6元(約100円)の中国風クレープ「煎餅」の支払いはスマホで表示させたQRコードを提示して済ませた。
通り掛かったスーパーマーケットのレジには「アリペイ歓迎!」の表示が見受けられる。タクシーが必要なら、アリペイやWeChatペイが使える中国のライドシェア企業「滴滴出行(Didi Chuxing)」を使えばいい。同社は最近50億ドルの資金を調達し、企業価値が500億ドル(約5兆6700億円)に達した。
交通渋滞が嫌なら街中で見つけて乗り捨て自由のレンタサイクルのMobikeやOfoもある。QRコードを読み込むだけで借りられ、30分当たり0.5元(約8円)と格安だ。
調査会社KapronasiaのZennon Kapronによると、消費者のエンゲージメントを高める目的でモバイル決済を導入している店舗も多い。筆者はサンドイッチをWeChatペイで支払った後、店員から公式アカウントをフォローすればクーポンやバーチャルメンバーカードを発行すると勧誘された。
街のブティックのドアには「支払いにはWeChatを」と書かれている。クレジットカードも使えるが、モバイル決済を利用しないと時代遅れだとみなされるのだ。ウェイボーには、デジタルウォレットの時代にクレジットカードを使うのは「ダサい」との書き込みもあった。
アリペイやWeChatペイは日常的な買い物にとどまらず、光熱費の支払いも出来る。さらにはローンを組んだりMMF(マネー・マーケット・ファンド)を購入する場合にも使える。
2016年にはアップルがユニオンペイ(中国銀聯)と協力して中国のモバイル決済市場に参入した。アップルペイはマクドナルドでは使えたものの、参入から12か月を経てマーケットシェアは1.8%以下。アリペイは54%だ。マーケティング会社China SkinnyのMark Tannerは、「他社があまりに定着しているため、アップルペイに勝ち目はない」と言う。
屋台からショッピングモールまで、筆者が訪れたほとんどすべての場所でモバイル決済が利用できた。もはや現金は過去のものになりつつある。