「ニューヨークはアメリカで2番目に大きいベンチャーマーケットに成長したが、シリコンバレーと比べるとまだその規模は小さい」と、ニューヨークのテック系スタートアップ密集地区“シリコンアレー”に拠点を置くベンチャーキャピタルHOF Capitalのマネージング・パートナーのDavid Tetenは語る。カリフォルニアには400ものベンチャーキャピタリストが存在するが、シリコンアレーには数十しか居ないという。
ニューヨークのベンチャーマーケットでの取引額や取引数もシリコンバレーと比べて3分の1程度であることが様々な調査から分かっている。また、ニューヨークで集められる出資額はシリコンバレーと比べると現実に即した額だという。「ニューヨークで巨額の出資が集まるケースは珍しい」とTetenは言う。
そんな中、グーグルやフェイスブック、イーベイなどの大手は、ニューヨークにオフィスを設置して新たなスタートアップの発掘に乗り出している。
ニューヨークは最先端テクノロジーでもシリコンバレーと競う存在になりつつある。ベンチャーキャピタルAutonomy Venturesの共同創業者Oliver Mitchellは新技術が専門で、「ロボット・ラビ(Robot Rabbi)」として知られる存在だ。彼は特にロボット工学とそれがライフスタイルやビジネス、プロダクションに与える変化に注目しているという。
NYはシリコンバレーより通勤も快適
これまではシリコンバレーに流れていた有能な技術者がニューヨークを選ぶ傾向も見られる。特にミレニアル世代は渋滞が当たり前のシリコンバレーよりも通勤が楽なニューヨークを好んでいる。ニューヨークでは1日で5つの会議をこなせるが、シリコンバレーでは3つが限界だろう。
さらに、ニューヨークのスタートアップシーンはグローバル化の傾向を強めている。シリコンバレーではアジア系が強いが、ニューヨークはヨーロッパやイスラエル、南アメリカ大陸から来た人々が起業するケースが多く、世界進出の機会を狙っている。人気の進出先はシリコンバレーと同様に、マーケットサイズが魅力の中国だ。
政府も景気拡大の一環として、ニューヨークを拠点とするスタートアップの海外進出を支援している。ルーズベルト島に建設中のテックキャンパスなどのプロジェクトもあり、アクセラレーターやインキュベーター、コワーキングスペースも増加している。シリコンバレーに追いつこうとするシリコンアレーの快進撃はまだまだ続いていきそうだ。