研究を行ったRomain Paulus、Caiming Xiong、Richard Socher によると、テキスト要約技術は、長年に渡って進化が停滞していたという。従来のAIは特定の単語やフレーズを本文から抽出するか、本文では使われていない単語を使って新たな文章を作成する。しかし、支離滅裂な内容になったり、同じ単語やフレーズが繰り返し出て来る文章になる問題があった。
セールスフォースのアルゴリズムは、単語よりも文脈にフォーカスし、重複した表現を避けるといった新たなアプローチをとっている。研究者らは、CNNやデイリーメールなどのニュース記事を使い、単語レベルと要約レベルの両方について学習させたところ、格段に読みやすい要約を作成することができたという。また、テキストサマリーの精度を測定する「ROUGE」という評価メトリックで結果を測定したところ、スコアは従来よりも12%から16%も向上した。
これは大いに期待したい成果だが、AIアシスタントやボットが個々のユーザー向けに要約を作成できるようになるのは、まだ当分の先のことだ。
「要約の自動生成を完成させることは、チューリング・テスト(機械が知的かどうかを判断するテスト)にパスするAIを開発することに等しい」とSocherは話す。現段階では、AIには一般常識や特定の分野の専門知識が不足しているため、人間のレベルには遠く及ばない。
パーソナライズしたサービスを提供するためには、特定のユーザーの関心事や経験、知識などに基づいてAIを学習させなければならない。一般向けのニュース記事要約ですら、まだ改善の余地は大きい。AI は一般的には耳慣れない言い回しを使うことがよくある。
それでも、今回の成果により情報過多がある程度解消される可能性はある。例えば、会議の前に読まねばならない製品情報やメール、顧客との過去のやり取りなどを要約するだけでも、大いに役立つだろう。
「我々は、難解なAIの課題を解決することで、セールスフォースのビジネスをさらに発展させていきたい」とSocherは述べている。