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2017.05.13

ライドシェアの米リフト、病院への「無料送迎」で保険大手と提携

Courtesy of Lyft

全米の保険会社を代表するブルークロス・ブルーシールド(BCBS)協会は、配車サービスのリフトと提携し、医療機関への「無料送迎」サービスを開始する計画だ。診療予約を入れても無断でキャンセルする患者が多い状況を改善するための取り組みだという。

BCBSは、特定の民間医療保険の加入者のうち交通機関へのアクセスに問題を抱える人たちに同サービスを提供することで、コスト削減と治療状況の改善につなげることが可能だと見ている。リフトとの提携に関する具体的な条件などについては、明らかにされていない。

リフトとの提携により、BCBSは実際にかかった医療費を支払う現在の「出来高払い」制から、「患者にとっての価値に基づく」医療体制への移行や、ポピュレーション・ヘルス(特定の集団に属する人の特性に応じて提供する医療サービス)の向上を目指すモデルへの転換を実現したい考え。つまり、同サービスは患者が適切な場所で適時に質の高い医療を受けられるようにするためのものだ。

また、リフトのサービスを利用することで「予約の無断キャンセル」を減らしたいとするBCBSは、それによって設備が十分に整っていない緊急治療室でしか治療を受けられない人を減らすことができるとの見方を示している。

BCBSによれば、交通手段に問題があることで治療の予約に遅れたりキャンセルしたりする人は、年間350万人を超える。メディケイド(低所得者向け公的医療保険)は多くの州で交通費を補償しているが、それでも必要な時に必要な場所で診療や治療を受けることができない人は、数百万人に上るという。

広範囲でのサービス目指す

提携サービスは、年内に一部地域(現時点では未公表)で試験的に開始する予定だ。保険加入者が治療の予約を取ると、その医療機関または保険会社がリフトによる送迎を手配。加入者には、配車スケジュールの確認の電話が入るほか、アラートも送られる仕組みになっている。

リフトはすでに、医療機関までの往復に同社サービスを利用する高齢者専用に開設した「コンシェルジュ」プラットフォームを運用しており、試験プログラムにはこれを利用する予定。

BCBSは全米規模の協会で、ヘルスケアサービス・コーポレーションや、「ブルークロス・ブルーシールド」のブランド名で営業を行うアンセムなど、36の独立した医療保険会社が加盟する。BCBS幹部は、加盟各社は今後、リフトの送迎サービスの適用範囲を拡大し、その他の医療保険の加入者にもサービスを提供していくことができるだろうと話している。

一方、リフトのジョン・ジマー社長は、BCBSとの提携により全米50州での同サービスの提供が可能になるとして、「業界横断的な提携は、私たちのコミュニティーを強化し、米国の家族をより健康にするための方法として極めて重要だ」と語っている。

編集 = 木内涼子

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