CDが登場する前は、ほぼ全てのアーティストがシングルやアルバムをカセットテープで発売していた。だが昨今のカセットブームを牽引しているのは、一部の限られたアーティストである。
ビルボードの記事によると、昨年1000本以上を売り上げたタイトルはたったの25本。いずれも、配信、CD、レコードで桁違いのセールスを上げたヒット作ばかりだ。それでも2015年、1000本以上売れたカセットが8本だったことを考えると、確実に復活を遂げていると言えるだろう。
2016年に最も売れたカセットは、映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のサウンドトラックで、セールス本数は4000本以上。同作は2014年にリリースされて以来、売れ続けている。その他、エミネムの出世作である1999年のメジャーデビューアルバム「The Slim Shady LP」が約3000本、昨年他界したプリンスがプリンス・アンド・ザ・レヴォリューションとして1984年に発表した「Purple Rain」が2000枚のセールスを記録した。
ジャスティン・ビーバーの「Purposeパーポス」(2015)、ザ・ウィークエンドの「Beauty Behind the Madness」(2015)といった近年の作品も、それぞれ1000本程度のセールスがあったが、世界中で爆発的なヒットしたアルバムの割には少々寂しい数字である。
これらの結果から、消費者はカセットテープをコレクターアイテムとして購入していることが推測できる。アルバムを初めて購入する際に、数あるフォーマットの中からカセットテープを選択しているというよりは、既に他のフォーマットで持っているアルバムをカセットテープの形で所有したい人が多いのではないだろうか。
アルバムに多額の制作費をかけられるアーティストは、これからも新作をカセットでリリースし続けるだろう。だが、カセットプレーヤーが普及していないことなども考慮すると、今後もカセットテープの売り上げが配信やレコードのような成長を見せることは期待できない。カセットテープのリバイバルは、一部のタイトルに限定されたブームに留まりそうだ。