愛煙・分煙の知られざる経営学

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喫煙者からは「一箱440円のうち245円が税金だ。これだけ払いながら吸える場所はほとんどない。都心はビル内も路上も禁煙だぜ。海外では路上はOKのはず。禁制品でもないのに、こりゃ喫煙者への虐待、差別じゃないの」と怨嗟の声が上がる。小規模飲食店は分煙設備を義務付けられると資金負担が重く、廃業せざるをえない店も少なくないようだ。

重要な税源物資なので、財務省のたばこ事業等分科会でも議論が行われるが、委員の圧倒的多数が禁煙派である。あるとき、ヒアリングで、タバコ事業者の参考人から「タバコがにおうというが、自分には女性の香水のほうが臭い」と不規則発言まで飛び出した。よほど追いつめられていたのだろうか。

問題の核心は受動喫煙被害を防止できるかどうか、だと思う。喫煙については、世間の多数説を無視するかどうか、いわば自己責任の世界。受動喫煙となるとそうはいかない。自ら望まず健康被害があると喧伝され、しかも嫌な臭いと煙を吸わされる身にはたまったものではない。

したがって、世の大勢と折り合いつつ平和裏に喫煙を続けるためには、他人様に煙害を与えないことが決め手ではないか。

加熱式タバコはその答えのひとつだろう。嫌煙家の中には、この方式でも受動喫煙の被害はあると主張する向きもある。正確に医学上どうなのかは判断できないが、素人目ながら煙の性質や量、香りは明らかに従来品より格段に少ない。

注目したい点は、長年の努力と巨額の投資でここまでの製品をつくり上げてきたことである。開発者たちの主張する好データについて、先入観のない検証・評価が必要だと思う。開発プロセスでは、目に見えない技術革新とベンチャービジネスへの波及も数多く生まれたはずだ。高額のたばこ税率も従来品と同様に課せられる。

知恵を絞って難点を減らしつつ、産業創出や財政支援に寄与する開発行為に対して、二項選択的に「ダメなものはダメ」というスタンスはいかがなものか。

こんな私の所感に友人がポツリ。

「でもタバコはモクとも言うよな。煙の出ないモクってありなのかなあ」。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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