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T.TATSU / shutterstock.com

ヘビースモーカーの友人が、思わせぶりに上着の内ポケットを弄った。携帯電話とほぼ同じサイズの容器を取り出す。中には短い万年筆ほどのスティックが格納されている。スティックには小さな緑色のランプが点灯している。

右端の開口部に白色の短い棒を差し込む。スイッチらしきものを押して数秒待つと、おもむろに棒を咥くわえた。
 
わずかに白い煙を出すが、臭いはほとんどない。急速に普及している「加熱式タバコ」である。ライター不要で、出るのも紫煙ではない。水蒸気だけなのだ。

「愛煙家は肩身の狭い思いをしてきたが、お蔭で助かるよ。普通のタバコみたいに周囲にタールをまき散らすことも、臭いを嫌がられることもないからな」。

友人の加熱式は海外メーカーの商品だが、後日、私は日本たばこ(JT)のブランドも手に入れた。使い勝手はよい。「加熱式のシェアは、首都圏で1割に迫っているらしい。俺は家用、職場用、外出用と3器買ってしまったよ」。
 
世界的な禁煙運動を目の当たりにして、タバコ会社は市場の生き残りをかけた受動喫煙被害極小の製品開発に注力した。その成果であろう。
 
友人の愛用する加熱式の場合は、10年の年月と2000億円の資金を投入したといわれている。興味深いのは、300人以上の医療と機械の専門技術者たちが、横断的かつグローバルな研究開発にあたったこと、部品の製造とサプライチェーンが世界中に展開していること、である。加熱するブレードのヒーターやセンサー、制御ICはヨーロッパ各国のベンチャー企業と研究機関が担当し、バッテリーは日本企業と韓国企業が分担している。
 
新製品で精密機械ゆえに、時々故障が発生しているが、「日本製の部品を使用しているものは故障が少ない」とJapanクオリティの面目躍如たるエピソードもある。

日本の嫌煙ムードは東京オリンピック・パラリンピックを前に、いや増すばかりだ。厚生労働省は飲食店などの分煙徹底法案を策定し、「世界に恥じない」禁煙大国を実現しようとしている。すでにオフィスビルでもホテルでも、薄暗いウサギ小屋のような喫煙室でしかタバコは吸えない。喫煙者が支払うたばこ税は年間約2兆円、豪奢なホテルが何百棟も建つ金額なのに。

文=川村雄介

 

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