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フォーブス ジャパン編集部 編集者

(Photo by Junko Kimura/Getty Images)

OECD国際比較統計から考える日本企業の働き方。経済協力開発機構東京センター、村上由美子所長に聞く「日本の現在地点」とは


ー著書『武器としての人口減社会』の中でテクノロジー革命は日本にとってチャンスであると述べている。

村上:ヨーロッパやアメリカをはじめ、日本以外のOECD諸国では、失業率が高止まりしており、中々改善されない。その状況でテクノロジーの台頭があり、機械が仕事を奪うのではないか、それは社会的に許されないのではないか、という議論になっている。

日本の場合は、状況が逆。急激な人口減少、労働者不足という深刻な問題に直面しているたまたま同じタイミングで、AIや自動化といった労働代替テクノロジーが救世主のように目の前に現れた。失業率の問題にとらわれることなく、思い切りテクノロジーの導入に舵を切れる。

しかし、これは短期的な視点。2020年までにテクノロジーにより仕事の内容が大幅に変化する職種の割合は、日本でも22.4%に達すると予想される。中長期的には、人がいかに機械と共働していくか、40〜60代の生産年齢層が、いかに機械との共存のための新しいスキルを習得していくか、が課題となる。

ー新しいスキルの習得、労働者のリスキリング(再訓練)の課題は何か。

村上:OECDの国際成人力調査(PIAAC)によると16〜65歳の日本人成人の読解力、数的思考能力は加盟国中トップだ。アメリカをはじめ諸外国では、基礎学力の欠如のためにリスキリングの困難に直面している例も多く、日本はその意味で優位な立ち位置にある。一方、問題解決能力、仕事におけるICTの活用能力は低い(図1)。


問題解決能力については、15歳を対象とした調査でも同じ低調な結果が出ており、教育システムがひとつの要因と言える。しかし、会社に入ってからの問題もある。大企業に就職し、人事に敷かれたレールの上で3年ごとに配属が決まり、ローテーションで経験を積む伝統的なシステムでは、個人の能力の差異が見えにくく、規格外のことを提案する状況にない。市場で本当に必要とされているスキルを習得することができない。また、新卒採用の純粋培養の人材のみを重用する「自前主義」では、プロダクトサイクルが短い市場で破壊的なイノベーションを断続的に起こし、競争力を保つことができない。

PIAACでは、日本人は自分の能力を仕事で活用していないと感じる人が他国と比べて圧倒的に多いという結果も出ている。他国に比べ、短期間で新しいスキルを習得できる素地がある。労働市場を流動化させ、「宝の持ち腐れ」状態から脱する必要がある。

ー日本は1人当たりのGDPで見た労働生産性でOECD平均を下回っている。

村上:確かに日本の労働生産性は低いが、興味深いデータもある。インターネットが職場で利用されるようになった2000年代初頭から現在まで、金融危機の際の振れ幅を除けば世界的にみて労働生産性は上がっていない(図2)。


むしろ右肩下がりだ。しかし、これは全体をならしたマクロの数字。細かく数字をひもとくと、製造業、サービス業ともに上位企業100社の生産性は急激に上がり、対照的に全体および下位の企業では下がっている。上位企業には、AmazonやGoogle、トヨタといった企業が入っている。これは、単にテクノロジーやITツールを使って効率的に働くことが生産性を上げるとはいえず、イノベーションを起こす環境、システムを整えることがいかに重要であるかを示唆している。

ー日本で、イノベーションを起こす環境を整えるために必要なことは何だと考えるか。

村上:生産性が急激に向上しているトップグローバル企業の共通点は、(1)激しい競争環境に置かれており、常に変化を必要とされている。(2)グローバルな最先端の情報へのアクセスやネットワークがある、という点が挙げられる。日本でも規制緩和などで、健全な競争環境を整えていくことが重要だと考える。

テクノロジー革命の最も「おいしいところ」は、いかにシステムとしてイノベーションを起こす環境をつくっていくか。知識型経済が主流の時代、働き方の多様性をうまく包括的にシステムとして受け入れ、社員のインセンティブを引き出し、いろいろな人が自分の持っている才能、アイデアを生かせる企業文化を醸成することが成功の鍵となる。


村上由美子◎経済協力開発機構東京センター所長。上智大学卒業、ハーバード大学院経営修士課程修了。13年から現職。著書に『武器としての人口減社会』(光文社)。

構成=岩坪文子

 

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