自由でフラットな働き方を支える「ソラコム」流のチームプレー

ソラコム、玉川憲社長(写真=ヤン・ブース)


正しいやり方がない未知の世界に挑むソラコムには、働き方を評価する定量的なKPIは存在しない。

代わりに、「Customer Centric(顧客中心に考える)」「Proactive(未来を明るく肯定する)」「AvoidMuda(ムダを省く)」など、15個のリーダーシップ・ステートメントが、定性的な働き方の指針として社内に浸透。「その提案は、Proactiveではないのではないか」といったように、お互いの働き方を日常的に修正するツールとなっている。

ただし、リーダーシップ・ステートメントは、不変の理念ではない。社員が一堂に会する、3カ月に1度の対面ミーティングにおいて、社員たちの手で断続的な更新がなされているのだ。

オンライン・オフラインを問わず、円滑に活発な議論ができるのは、マネジャーがおらず、全員がリーダーである「フラットな組織」だからこそ。社員全員が愛称で呼び合い、先輩・後輩という概念をなくすことで、意見の壁をなくしているという。ただ、フラットなコミュニケーションには、信頼関係の構築が欠かせない。玉川は会社としての「感情の扱い方」が鍵になると語る。

「テクノロジー企業の中には、エンジニアの技術力だけを評価する“技術至上主義”の企業も少なくない。しかし、チームの力でグローバルなビジネスを展開しようとする場合、組織の感情面をケアできない体制では、長く戦い続けることは不可能。社員には他人の気持ちを考えられるチームプレイヤーであることを第一に求めている」

技術志向のテクノロジーカンパニーであっても、エモーショナルな部分をないがしろにしない。この玉川の経営哲学こそが、ソラコムの自由でフラットな働き方を支えているのだった。


SORACOM◎IoT向けに最適化されたプラットフォーム「SORACOM」で、低コストで柔軟な通信ソリューションを提供するテクノロジー・スタートアップ。IoT 向けのデータ通信を提供する「SORACOM Air」や、IoT デバイスにかかる暗号化等の高負荷処理や接続先の設定をクラウドにオフロードできる「SORACOM Beam」などのサービスを展開し、新しいIoT市場を開拓する。

玉川 憲◎ソラコム代表取締役社長・共同創業者。東京大学工学系大学院機械情報工学科修了。カーネギーメロン大学MBA・MSE修了。日本IBM基礎研究所を経て、2010年にアマゾンデータサービスジャパンにエバンジェリストとして入社。日本のAWSクラウド事業立ち上げチームを指揮。15年ソラコムを創業し、現職。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事