ビジネス

2017.05.02 12:30

日本から「ジェフ・ベゾス」を輩出するために必要な2つのこと

アマゾンのジェフ・ベゾス(GettyImages)


いま日本で成功している経営者の中で、ボーン・グローバルに一番近い感覚をお持ちなのは、例えばビリオネア・ランキングで日本人トップ(34位)に立ったソフトバンクの孫正義さんではないでしょうか。
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ソフトバンク自体は、国内で成功してから海外に展開しているので、ウーバーなどと比べればボーン・グローバルとは言えないかもしれません。しかし、孫さん自身は日本の高校を中退して渡米し、カリフォルニア大学バークレー校に進むなど、若い頃からグローバルな感覚を持っています。

1995年には米ヤフーへ出資、2012年には米スプリント買収、そして2016年の英アーム社買収と、国際進出も加速させています。大統領選の直後、ドナルド・トランプ氏と対話し500億ドル(5兆7000億円)の投資を決めたことも記憶に新しい。こうしたグローバル・レベルで大胆な動きができる経営者・起業家は、今の日本では孫さんを除いて数えるほどしかいないかも知れません。

「ネクスト孫正義」はこの2人!
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とはいえ最近では、日本の若手の起業家の中でもボーン・グローバルの感覚を持つ方々が増えてきている印象を持っています。その代表は、メルカリ創業者の山田進太郎さんやソラコム創業者の玉川憲さんでしょう。フリマアプリのメルカリ、IoTプラットフォームを提供するソラコムは、両社とも世界のマーケットを視野に入れ、事業を展開しようとしています。メルカリは既に主要拠点をアメリカにしていますし、ソラコムも創業間もないにも関わらず、ドイツに進出しています。

もう一つ、世界的な起業家に重要な資質を示す理論は、「センスメイキング理論」だと私は考えています。ミシガン大学の経営学者カール・ワイクによって提示された考え方で、私も非常に重要だと考えています。この理論は、不確実性が高く、先のことがわからない時代に経営トップに求められるのは、従業員・顧客・投資家などのステークホルダーに対して「納得・腹落ちできるストーリーを語る」ことである、という考え方です。

日本企業の多くは、未だに「現時点での正確な分析」を重要視しています。「正確な答え」をビジネスに求めているのです。しかし、これだけ変化が激しく、不確実性の高い時代に、正確な答えを予測することはほとんど不可能です。

むしろ求められるのは正確性ではなく、「世の中の大きい流れはこういう方向だから、我が社の進むべき道はこうあるべき。だからこうやって一緒に進もう」と相手に納得できる語り方をして、ワクワクさせることで、人々を巻き込んでいくことが重要なのです。

孫さんはストーリーテーリングの能力が高く、人々を納得させる力が突出しています。孫さんに次ぐストーリーテラーは、ユニクロの柳井正さん(ランキング60位)、日本電産の永守重信さん(同522位)の2人でしょう。

よく、孫さん、柳井さん、永守さんは「ホラ吹き3兄弟」と呼ばれます。しかしこれは、3人とも強烈なストーリーテラーであるということを意味します。これからの起業家・経営者には、ボーン・グローバルの資質に加えて、このセンスメイキング理論の示唆する側面を期待したいです。既に海外で勝負しているソラコムの玉川さんが強烈なストーリーテラーになれば、さらに多くの人を巻き込んで、やがてフォーブスのビリオネア・ランキングに登場する日もあるのかもしれません。個人的には、それを期待しています。

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入山章栄
◎慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。(Photo:Forbes JAPAN No.28より)

構成=新國翔大

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