キャリア・教育

2017.05.01 15:30

相次ぐCEOの失言 きっかけの多くは共感力不足


ムニョスの声明には、ジョージ・ハーバート・ミードが言ったような、他者の気持ちになって考える能力は全く見受けられない。もし彼が立ち止まり、自分や同社従業員以外の人の気持ちを考えていたならば、違うメッセージを発表していたかもしれない。

その後、ムニョスが自社従業員向けに送ったメッセージにより、事態はさらに悪化した。その内容には次のような言葉が含まれていたい。

「当社が丁寧に降機を依頼した乗客の一人がそれを拒否したため、残念ながら状況は悪化し、シカゴ航空保安当局に支援を要請せざるを得なくなった。当社の従業員は、こうした状況に対処するために決められた手順に従った」

この言葉にもまた、共感は全く含まれていない。だが、この言葉でさらにたちが悪いのは、同社の全従業員に対し「あなたたちも乗客に共感する必要などない」というメッセージを送ってしまったことだ。CEOが共感を見せないのであれば、従業員が共感を示さなければいけない理由はどこにあるだろうか?

ウーバーのカラニックCEO

ウーバーが過去数か月にわたり引き起こしてきた問題の数々は、皆さんも目にしたことだろう。同社のアプリ削除を呼び掛ける「#DeleteUber」運動や、同社を退職した女性ソフトウエアエンジニアがブログで告発したセクハラ問題、そして前職でのセクハラ疑惑が発覚したエンジニアリング担当上級副社長の辞任などだ。

しかしその中でも、カラニックがウーバー運転手のファウジ・カメルと激しく口論した問題では、彼の共感力不足が特に強烈に露呈した。カラニックが友人2人とウーバーを使用した際、目的地に着いて友人が車を出ると、カメルは同社が高級サービス「UberBlack」で最近行った変更について、カラニックを問い詰めた。

会話はすぐに激しさを増し、カメルが「あなたはもう信頼されていない。あなたのせいで私は9万7000ドルを失った。あなたのせいで破産だ。あなたは毎日変更を加えている」と話すと、カラニックは怒りを抑えきれず「自分のへまに責任を持たない人は、自分の人生のあらゆることを他人のせいにするものだ。幸運を祈る!」と言い放ち、その場を立ち去った。

CEOとして従業員から突然感情をぶつけられるのは面白くないし、楽でもない。しかしこうした出来事は実際に起きるものであり、CEOはそれに備える必要がある。取り乱した従業員に対して「おまえは負け犬だ。自分の責任は自分で取って、自分の惨めな人生を私のせいにするのはやめろ」と言うほど共感力に欠ける返答は、ほとんどない。
次ページ > 共感力を磨こう

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事