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2017.05.08

流行りモノを手がける起業家の「コンテンツへのこだわり」

佐俣アンリと鎌田和樹(写真=平岩 享)

鎌田和樹が2013年6月に創業したUUUMは、YouTubeに動画を投稿するクリエイター「YouTuber」の動画制作活動のサポート、所属YouTuberのマネジメント等を手がける。

「HIKAKIN」や「はじめしゃちょー」など、トップクリエイターが多数所属。同社が関わるYouTubeチャンネル数は4000以上で、月間の総再生回数約21.6億回、合計再生時間約234億分を誇る。佐俣アンリが代表を務める独立系ベンチャーキャピタルANRIは、13年8月に投資を実施した。


佐俣:出会いは、13年の8月。六本木ヒルズの横にあるカフェです。独立したばかりでオフィスがなかった私は、一日中そこで人と会っていました。一貫してインターネット関連の仕事をしてきた立場から見て、鎌田さんには“インターネットの人”にはない異様な迫力があり、ものすごくタフな人だという印象でした。

鎌田:ビジネスの経験はあったものの、創業時はインターネットとベンチャーに関しては無知。そこで、信頼できる方に相談したところ、アンリさんを紹介いただきました。共鳴し信頼できる方だと感じ、株主になっていただきました。

「個人がメディアになる時代の象徴」と紹介されるYouTuberも、当時は誰も知らない。認知度上昇が売り上げに直結すると考え、最初の出資金はPRとYouTuberの支援で、3カ月で使い切りました。

佐俣:鎌田さんほど、優れたビジネスマンでありつつ、やると約束したことを淡々とこなす起業家は珍しく、追加の出資への躊躇はありませんでした。毎週の打ち合わせでは、事業の経過と必要とする支援を明確に伝えてくれるので、投資家として的確なサポートを提供できました。

鎌田:主にお願いしたのは、会社の紹介。ほぼ全ての会社に会うことができた上に、適切なタイミングで紹介いただけたことが、事業をスケールさせる足がかりになりました。

佐俣:手がけているのは一見“流行りモノ”のようなビジネスですが、その表面的な印象と、鎌田さんの仕事のセオリーは真逆。「約束を守って、信頼関係をつくり、仕事には愚直に打ち込む」という極めてシンプルな仕事のやり方で成功できる。そんな鎌田さんを僕は「何屋でも上場できる」と常々言っています(笑)。

鎌田:事業のターニングポイントになったのは、YouTuberを媒介にした商品販売から、彼らの活動を支援するビジネスに転換したこと。多くのクリエイターに会う中で、支援の必要性に気づき、事務所としてYouTuberに寄り添い、コンテンツを生み出すことにしました。

佐俣:ネット企業はユーザーに向き合うことは得意でも、人と向き合うことは苦手です。優れたクリエイターたちを抱えて、仕事を提供していることではなく、抱え続けられていることこそが、UUUMの競争優位。スマホを入り口にしたデジタルでの時間消費のうち、動画の占める割合が急速に拡大する中、クリエイターと一緒に動画コンテンツを作れるUUUMは、現状を維持するだけで、自然と成長します。鎌田さんには、その先にある“今と地続きでない未来”をつくることに期待します。

鎌田:マネジメント業は偶然出会ったビジネスモデルに過ぎず、YouTubeと無関係のビジネスも多数手がけています。やりたいのは、コンテンツ作り。居酒屋経営に興味を持っているのも、「場所」がコンテンツになり得るから。「どこで見られるか」ではなく、「何を見られるか」に集約される「キングコンテンツ・イズ・キング」の発想で、コンテンツ作りにこだわっていきます。


佐俣アンリ◎ANRI代表。慶應義塾大学卒。リクルートを経て、EastVenturesにて、投資及び事業立ち上げ支援に従事。2012年に独立系ベンチャーキャピタルANRIを創業し、現職。主な投資先はラクスル、Coincheck、CLUE。

鎌田和樹◎UUUM代表取締役CEO。テレコムサービスにて、携帯電話ショップの出店、ショップ運営、アライアンス等を担当。2011年よりイー・モバイル一次店の代表取締役を務めた後、13年6月にUUUMを創業し、現職。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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私がこの起業家に投資した理由

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