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2017.05.02 16:30

イノベーション・チームが知るべき「2つの違い」

ESB Professional / Shutterstock.com

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セールスフォース・ドットコムでは顧客向けイノベーション支援プログラム「Ignite」を導入している。「Ignite」とは、ソリューションデザインチームが顧客の「デジタル・トランスフォーメーション(事業の構造的変革)」という経営課題に対し、顧客とともに課題の可視化、解決策のプロトタイプ化を行う取り組みだ。

前編に続き、同プログラムのグローバルトレーナーであるマリオ・ルイーズ氏に、どのように顧客の経営課題解決に取り組んでいるのかを聞いた(インタビュアー:biotope・佐宗邦威CEO)。


佐宗:セールスフォースの顧客向けイノベーション支援プログラム「Ignite」とデザインスクールでの学びとの異なる点として、「プロトタイピング」のアプローチをあげられました。その違いにとても興味があります。

マリオ:セールスフォースの技術を用いてプロトタイピングを行ってもらいます。スピーディーな開発環境をつくり、顧客のためのデモ環境を作り出すことができる。我々の技術とプラットフォームを用いて、最終的なデザイン(見た目や感触)を見せると同時に、デザイン思考の文脈のもとでのビジョン作りや、ユーザーのためのストーリーを作り、サポートしています。

佐宗:開発サイクルは、どのくらいの期間でしょうか。

マリオ:私の感覚では、リサーチフェーズが4週間、DAREフェーズである共創が2〜3週間、DOフェーズが4〜5週間です。顧客とプロトタイプの開発と改善を何度も繰り返すため、顧客と共にやることが大切です。またユーザーも巻き込みます。消費者向けのものであれば、消費者からフィードバックをもらい利便性を高めることが有効です。

佐宗:約3カ月間、フルタイムでコミットするのでしょうか。顧客からすればなんて豪華な体験でしょう。

マリオ:はい。我々チームは、「Ignite」だけにフォーカスしていますから。我々は顧客と一緒に“旅”に出て、お互いから学び、同じ問題を扱う1つのチームとなります。これはいいことだと思っています。そこに価値があり、多くの時間をともに過ごすことで、表面的な理解ではなくなりますから。

我々が、ビジネスや人間、テクノロジーについて理解すればするほど、顧客はつくり出される「ビジョン」に自信がもてます。そして変化をマネージし、ビジョンをしっかりと実装までつなげることができます。

佐宗:セールスフォース側が引っ張っていくのでしょうか。

マリオ:顧客側のチームと我々のチームでは、それぞれ異なる部分を見ています。我々はアプローチをファシリテートし、そのアプローチが人間中心であり、アクティビティが遂行されることを管理します。ビジネス、テクノロジー、ヒューマンという観点が、しっかり顧客のアプローチに組み込まれるように、我々のチームには、技術の専門家や建築士など多様なメンバー構成になっています。

佐宗:ソーシャルな側面についてはいかがでしょうか。

マリオ:イノベーション・プロセスのソーシャル面とは、チームを導くということです。我々のプロジェクトは3カ月という期間なので、この間にどうやって「ブレイクダウン」し、「チームのメンバーがコミットする事に納得してもらえるか」──中でも特に、懐疑的だったり自信がない人に、自信をつける教育の要素が強いです。それは時速0マイルを急に60マイルにするのではなく、時速10マイル、20マイルと段階を踏んでいきます。このプロセスがコアになります。

また、もう一つ大事なのは、目的を正しく説明することです。大きな変化は、たくさんの人に影響し、かつ、浸透するのに長い時間を要します。だからこそ、「目的」や「なぜやるのか」という理由を“強く発信する”必要があります。顧客の中に目的意識をつくり、変化の必要性を理解してもらうためには、役員に届かなければいけません。そして、顧客には、ビジョン、目的に沿って、「どうしたら組織を導けるか」を考えてもらいます。

そのため、ソーシャルな面のもうひとつの側面は、組織内で小さなムーブメントを起こすことだと言えます。そのムーブメントを起こす仕組みは、組織内の変化と似ており、いかに変化をマネジメントし、どのようにビジョンとアイデアを伝え、様々な動きがある中で、教育とコミュニケーションを管理することになります。
次ページ > 直線的ではなく曲線的なアプローチを

文=佐宗邦威

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