佐宗:フォーブスの読者には経営陣が多いですが、イノベーションを起こしたいと思っている人たちにメッセージをお願いします。
マリオ:この1世紀でデザインがたどった進化を見ると、デザインはよりよいプロダクトデザインを生むためだけでなく、経営戦略のリソースとして使え、文化や組織、そして変化にインパクトを与えられるということがわかります。経営陣も、そうした目でデザインを見ることで、企業の成長が生まれることがわかると思います。
デジタル化が世界中のビジネスを破壊していますが、そうした見方をすることが破壊から防いでくれると思います。「デジタル化に素早く対処し、成長を維持できるか」と考えるには、顧客価値を人間中心なアプローチで考えることが重要になります。技術主導、技術中心で考えることは、よりリスクが伴うと考えています。なぜなら、いかに人々が実際に欲して使うサービスをつくれるか、が大きな力になるからです。
佐宗:最後に、マリオさん個人のビジョン、チャレンジを教えていただけますか。
マリオ:僕の個人的な挑戦は「デザインがどう変化を生み、ソーシャルな面についてもっと考えること」です。大きな組織内でデザイン思考のリテラシーをあげられるか。スタンフォード大d.schoolでも教えたことがありますが、同スクールは、デザインのバックグランドの生徒ではありません。それでも、デザイン思考を複雑な問題解決へと用いるというビジョンを共有する彼らと、一緒に仕事をするのは、とても面白かったです。
私のビジョンは、イノベーションチームだけではなく、組織全体としてデザイン主導のマインドセットやアプローチを用いて、組織全員が顧客やユーザーについて考える。そうすれば、組織はもっとアジャイルに、人間中心になります。
今後テクノロジーは、AI(人工知能)に代表されるように、より複雑に、そして透明になります。我々はその“使い方”についてよく考えなければなりません。誰のために、何を解決しようとしているのか、どうすればテクノロジーがそれをサポートできるのか──。それを顧客と考えることも私のビジョンですね。