ビジネス

2017.05.01

デザイン主導で「イノベーション支援」する方法

drserg / Shutterstock.com


佐宗:ここからは「ignite」プログラムの内容、主にデザイン思考のプロセスについて聞いていきたいと思います。Amazon Thank Youプログラムのリンクを拝見しましたが、そこでは、DISCOVER/DARE/DOという三段階のプロセスが紹介されていました。

マリオ:実はDISCOVERの前にもう1ステップあります。そこで「問題と仮説」を定義します。プロジェクトに参加するメンバーを決めたり、組織の鍵となる部分をまとめたり、プロジェクトの目的を決めます。プロジェクトでは様々なリソースを使うことになるため、「なぜ、やっているのか」を理解してもらうことはとても大切です。

「なぜ、このビジネスを返る必要があるのか」「なぜ、新たなビジネスを立ち上げる必要があるのか」「なぜ、顧客とより良い関係を構築する必要があるのか」──。

その後DISCOVERフェーズでは、問題をできるだけ“スマート”に噛み砕き、ヒューマンファクター、ビジネスファクター、テクノロジーファクターという観点でみていきます。

1)ユーザーは誰で、2 何を理解しデザインする必要があり、3)ステークホルダーは何を考えていて、4)リーダーはこの機会をどうみていて、5)最もビジネスインパクトを与えられるのはどこか──。これらを考えることで、鍵となるビジネス・レバーが特定されていき、マネジメント側と共鳴するようになります。

我々は、できるだけ多くのことを顧客とユーザーから学び、時には顧客の顧客へもアクセスし、そこで得た全てのインサイトを用いて、顧客の本当の解決すべき問題を再定義します。重要なのは、これらを顧客とともに行う事で、こうした点をインプットすることで、問題解決した後の、未来のビジョンについて考えられるようになります。

DISCOVERフェーズでは、どうすれば上記5つ全てを満たす未来をつくれるかを考えます。これは我々のデザインするワークショップを通して行われ、ジャーニーマッピングやプロトタイピングなどのアクティビティを行います。こうしたワークショップは時に丸一日かかりますが、デザイン思考のアクティビティを行い、問題だけでなく、その解決方法も考えます。

次のDAREフェーズでは、顧客や組織にとって「どうあるべきか」。理解から「アイデアの抽象化」へという観点でみていきます。そしてDOフェーズでコンセプトをより細かいデザインへと落とし込み、テクノロジーでカタチにします。

我々のプラットフォームでプロトタイプをつくり、ユーザーが触れる体験をつくり、必要なフィードバックをもらう。そして営業や顧客サポートチームをはじめ、組織全体がどのように動くのかを見る──。これらを通して、企業のビジョンをつくり、組織の転換や未来の戦略へとつなげていく。また、そのビジョンが影響するビジネス分野を特定し、ビジネス価値もつくり出していく。

DOフェーズでは、ビジネスバリューや投資すべき理由、ビジネスでベロップの方法論を顧客へのアウトプットとして提供しています。

佐宗:マリオさんと私は同じイリノイ工科大学のデザインスクール出身です。そこでは標準的なデザイン思考のプロセスを学びました。また、マリオさんはデザインワークを通して自らのプロセスをお持ちだと思います。それらの視点を持つマリオさんから見て、「ignite」のプロセスはどのような特徴があると思いますか。

マリオ:デザインスクールで学んだことは、「システム思考」で見るということです。単独で成立するものは1つもなく、物事はつながっているため、エコシステムの観点からジャーニーマッピングやチームの共同作業を行う。こうしたことは「ignite」にも共通しています。

もう1つの共通点は、「デザイン・プランニング」という考え方です。Doblinという老舗のデザインコンサルティングファームを経営するラリー・キリーに言わせると「霧の中から立方体を切り出す」ということです。不透明でぼやぼやとしたものをブレイクダウンして概念化しビジュアライズすることです。この2点は「ignite」のコアであり、デザインスクールで学んだことが役立っています。

一方、異なる点は、プロトタイピングのアプローチ。そして、イノベーション・プロセスのソーシャルな側面についてです。イノベーションは新しいものをつくるプロセスではなく、ソーシャルなプロセスであること──これはデジタル・トランスフォーメーションを追い求める企業にとってはとても重要なことです。

文=佐宗邦威

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事