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1年が経って会社を辞めた後、当時深センで設立されたばかりのハードウェアアクセラレータ「HAX」のフランス人と知り合った。HAXでは欧米人が世界のスタートアップに資金とノウハウを提供し、深センからハードウェアを世界に送り出す試みを始動させていた。

「中国市場だけを相手にしていたらタオバオ(淘宝)に並ぶ格安の模造品に埋もれてしまう。利益を上げるなら海外で勝負するしかない。外国人ばかりのHAXで、自分はただ一人の中国人起業家だった。当然、会話は全て英語で行われる。海外留学の経験も無く、英語でのコミュニケーションはほぼ初めてだったが必死で英語を身につけた」

12年末にキックスターターでキャンペーンを開始。アルミ製のパーツに多様な電子モジュールを組み合わせ、専用アプリから子供でも簡単にプログラミングが行える基本モデルを99ドルで出品したところ、CNNや西側のテック系メディアで大きな注目を集め、翌年夏までに約20万ドルの調達に成功。

メイクブロックは中国人が設立したハードウェア分野のスタートアップとしては初めて、キックスターターでの資金調達に成功した企業に挙げられている。その後、米国の大手量販店との提携も結び、教育市場にも本格進出。15年には社員数90名まで急拡大した。

「中国では競合企業からすぐにコピー製品が出されるのが日常だ。しかし、独自のソフトを組み込んで製品の複雑度を上げ、優れたユーザー体験を提供することでコピー品に対抗する。一刻も早く事業規模を拡大し製品の完成度を高めることで、競争に勝ち続けていく」

メイクブロックは今後、北京や香港、オランダ、東京にもオフィスを開設する。国内では中国全土の公立学校の学生を対象にしたロボット大会を開催する。社員数は先日ついに300名を超えた。

「エンジニア出身で社交的なタイプではない」という王は、起業家イベントなどにも滅多に顔を出さない。社員のマネージメントも大事だが、時間があれば一人で物づくりに没頭したいのが本音だという。教育熱が高まる中国で、STEM教育市場は2020年に150億ドルまで成長するとの予測もある。

「今から何十年か後、著名な科学者が『子供時代にメイクブロックで遊んだ』と言ってくれることが自分の夢だ。自分たちのゴールはまだまだずっと先だ」と静かな口ぶりに熱を込めて王は話した。

発売中の「フォーブスジャパン6月号」ではメイクブロックのほか、深センのハードウェアアクセラレータHAXの育成プログラムの詳細や、卓球の練習ロボット「Trainerbot」を生んだ台湾人兄弟、さらに日本人として数年ぶりにHAXの育成スタートアップ企業に選ばれた「Walkies Lab」を率いる藤本剛一についてリポートしている。

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文=上田裕資

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