ピーター・ティールも認めた22歳「自動運転」起業家の野望

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オースティン・ラッセルは、高校時代にカリフォルニア大学アーバイン校のベックマンレーザー研究所(Beckman Laser Institute)で拡張現実(AR)やワイヤレス給電のプロジェクトに関わったことがきっかけで、3D画像技術の開発を思い立った。

現在22歳のラッセルは、5年前に自動運転車向けのLiDARセンサーを開発するLuminar Technologiesを設立し、CEOに就任した。Luminarは、シリコンバレーのポートラ・バレーと、フロリダ州オーランドに拠点を構えている。同社はこれまでステルスモードで製品開発を続けてきたが、目標とする技術水準をクリアし、量産体制の準備を開始したことを明らかにした。

Luminarは、年内にオーランドの工場で1万台のLiDARを生産し、自動運転車メーカーに販売するという。同社は生産量を2018年に数十万台に増やし、将来的には数百万台規模にすることを目指している。

ラッセルと、共同創業者のJason Eichenholzによると、LuminarのLiDARセンサーは、ベロダインやIbeo、Quanergyなどの製品に比べて測定距離が長く、解像度が高いのが特徴だという。

「我々のLiDARは、競合製品に比べて解像度は50倍、測定距離は10倍優れており、自動運転車の安全基準を満たす唯一の製品だ」とラッセルはフォーブスに対して語った。

人間のドライバーを上回る運転技術を実現する上で、LiDARは不可欠なテクノロジーだ。LiDARは、車の周囲360度の3Dイメージングをリアルタイムで行い、他の車両や障害物、歩行者、路上の穴や氷結を天候や時間帯に関わらず検知することができる。現段階ではLiDARの価格は非常に高く、コストダウンが求められている。

昨年、フォードとバイドゥはベロダインに1億5000万ドル(約162億円)を出資しており、Quanergyも生産体制強化のために9000万ドルを投資家から調達している。また、アルファベット傘下で自動運転技術の開発を手がけるWaymoは、ウーバーと子会社のOttoがLiDARに関する機密情報を盗んだとして訴訟を起こした。これらの出来事からも、LiDAR技術の重要性をうかがい知ることができる。

既存のLiDAR技術は「掃除機に搭載する」レベル?

Luminarによると、同社のLiDARの測定距離は200メートルと、一般的な製品の35メートルを大幅に上回るという。高速道路を走行中の場合、従来の技術であれば前方の障害物を除けるまで約1秒しかないが、Luminarの製品であれば約7秒の猶予が得られることになる。また、Luminarの製品は、従来の技術が検知しにくかった黒い物体も見逃さないという。

Luminarは、半導体材料にシリコンではなくインジウムガリウムヒ化物という素材を使っている。また、競合製品の多くが波長905nmのレーザーを使用しているのに対し、Luminarは出力パワーが40倍の1550nmを使用している。
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編集=上田裕資

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