ネットフリックスを追撃? アマゾン「動画事業」の成長戦略

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調査会社Parks Associatesのデータでは米国ではブロードバンド利用世帯の約半分がネットフリックスに加入している。動画ストリーミング分野でネットフリックスを追撃するのがアマゾンで、ブロードバンド契約世帯の約4分の1がアマゾンプライムに加入している。

アマゾンがネットフリックスに打ち勝つために大規模な投資を行うことは適切な戦略と言えるのか? 質問サイト「Quora」に寄せられた質問に、同サイトのエンジニア部門のバイスプレジデントXavier Amatriainが回答した。

「アマゾンがネットフリックスを潰すため大金を投じている」というヘッドラインは読者の目を引くが、本当のアマゾンの狙いは将来性の高いビジネス基盤を確立することだ。動画ストリーミングの分野は音楽とは違い、業界最大手がすべてを支配する分野ではない。

ネットフリックスとアマゾンの両社は、人々がケーブルテレビではなくストリーミングで動画を楽しむ未来を視野に入れている。つまりアマゾンが大金を費やしているのはネットフリックスに勝つためというよりもケーブルテレビに勝つためなのだ。動画ストリーミングという巨大なビジネスにおいて、2番手でいられるのは魅力的なことであり、挑戦する企業が少ないのが不思議なぐらいだ。

次に浮かぶのは、アマゾンが動画ストリーミング分野に巨額の投資を行うのは正しい戦略なのかという疑問だ。これに関しては明確な答は無い。動画ストリーミングのビジネスは大きな可能性を秘めているが、アマゾンは小売業やクラウド、ロジスティクス、ハードウェアデバイスなど様々な分野に進出しており、メディアビジネスにまで手を広げるべきなのかという疑問は残る(ベゾスは新聞社の「ワシントン・ポスト」を所有しているため、メディアに参入したい意欲はあるのかもしれないが)。

さらに、アマゾンの動画ストリーミングは単独のサービスではなく、プライム会員向けサービスの一部なので、動画ストリーミング自体が順調であるかどうかを測るのが難しく、投資効率に関しては外部からは分からない。アマゾンが将来、動画ストリーミングサービスを独立させる可能性もほぼ無いと言えるだろう。

まとめると、アマゾンはネットフリックスに勝とうとしている訳ではない。アマゾンはもっと広範囲な将来に向けて投資を行っている。アマゾンの動画ストリーミング業界での2位というポジションは非常にポジティブに捉えられる。

しかし、今後もアマゾンが動画ストリーミングに注力すべきかどうかには疑問も残る。なぜならば、アマゾンはこの分野において同社の明確なゴールを描けていないように見えるからだ。

編集=上田裕資

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