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坂ノ途中、小野邦彦 代表取締役

熱意を持った新規就農者が生活できずに、農業を諦める現実はおかしい。「持続可能な社会とは何か」。学生時代の旅の途上、文明の残骸が突き付けた根源的な問いに小野邦彦は挑む。


古代遺跡を思わせる佇まいである。風雪にさらされて煤けたレンガ造りの柱も、いくつもの橋脚が連続し、隧道のように見えるだまし絵のような意匠も。京都・南禅寺境内。1890年に造られた琵琶湖から京都市内に引いた水路の橋だ。

有機野菜の販売を手がける「坂ノ途中」の代表取締役である小野邦彦は、写真家の求めに応じて京野菜“聖護院大根”を抱え、橋脚に腰掛けた。京都市内の事務所で、彼がこう語ったのを思い出す。

「ぼくらの仕事は、1000年も2000年も前から続いてきたんです」

野菜を売る─。確かにその仕事は、通貨の誕生から、いや、物々交換の社会から続いてきた生業に違いない。

でも、と小野は淡々とした口調で語った。「農薬や化学肥料に過度に依存した農業を続けていては100年後、豊作を望めない痩せた土地になってしまう。つまり、短期的な収量を追う農業は“未来からの前借り”なんです。前借りをやめるには、アプローチを変え環境に配慮した農業を広めていくしかない」

小野が持続可能な農業の必要性に気づいたのは、大学時代。バックパッカーとして世界中を旅した。古代遺跡を前に彼は思う。遺跡とは、いわば社会が終わったあとの残骸。持続可能な社会とは何か……。旅は、青年に根源的な問いを突き付けた。

昔から人間の身近にあった農業こそが人と自然の結び目であり、これからの人と自然の関係性を象徴するのではないか、と。

外資系金融機関を経て、2009年に「坂ノ途中」を創業。新規就農者と提携し、彼らの育てた農薬・化学肥料不使用の野菜の販売を続ける。

「とはいえ、有機農業がすべていいわけではないんです」と小野は指摘する。

化学肥料はすぐに効果が出るが、有機肥料は効きが遅いために過剰に投入し、逆に土を汚染する危険性がある。手間と工夫が必要となるのだ。

そんな難しさを理解した上で有機農業を志す若者はたくさんいる。実際、勉強熱心でおいしい野菜を栽培する新規就農者は珍しくない。しかし後継者不足で急増する空き農地の多くは、狭い、水はけが悪い、獣害が多いなど、条件が悪い。味がよくても収量が安定しない。売り上げが立たず、農業を諦める新規就農者が多いのが現実なのである。

「だったら」と小野は続ける。「たくさん作るのは苦手だけど、おいしくてバリエーションが豊富という彼らの強みを活かす売り方をすればいい。そして年間100人の新規就農者を生み出す会社になれれば」。

新規就農者をネットワーク化

「坂ノ途中」が扱う野菜は年間400種。創業1年目、たった3軒の提携農家を軽トラックで回り、集荷した野菜を飲食店などに卸していた。それが、いまや京都を中心に提携農家は120軒にまで増えた。うち9割が新規就農者だ。

彼らをネットワーク化し、きめ細かく生産量の調整や情報の共有を行うことで、1件ずつでは規模が小さく不安定でもグループ全体では安定的に農産物を販売できる体制を築いた。

小野は「少量でも良いものを作る農業が職業として成り立ち、ビジネスとして成り立つべきだと思うんです」と語る。

今期の売り上げは2億5000万円程度を見込み、Webショップの会員数も毎月伸び続けている。小野が挑むのはビジネスの成功だけではない。地方再生、食の安全、生態系の保護。我々が直面する問題を解決するポテンシャルを秘める。


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山川 徹=文、宇佐美雅浩=写真

 

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