「自動車の設計・製造は、資本集約的で労働集約的だ。アップルが、既存事業に比べてわずかな利益しか得られない自動車開発に乗り出すとは考えにくい」と自動車関連の調査会社AutoPacificでバイスプレジデントを務めるEd Kimは話す。
また、新車市場は頭打ちの様相を呈しており、全米自動車販売店協会は、今年の新車販売台数を1710万台と、昨年の1755万台から微減となる予想をしている。
アップルは、2014年にCarPlayをリリースした。CarPlayは、電話やメッセージ、地図、音楽といったiPhoneの主要機能を車載ディスプレイで直接操作する機能で、トヨタを除く大半の自動車メーカーが対応している。
KimとNobleは、アップルが自動車を制御するための独自ソフトとアルゴリズムを開発していることは間違いないとしながら、同社が車両を開発する可能性については否定的だ。
「アップルは、自動運転車そのものではなく、関連するハードとソフトを開発するだろう。これらの分野において、アップルはグーグルの後塵を拝している。車両製造は儲からないが、コンテンツの提供であれば高い利益率が期待できる。完全自動運転車が実現してハンドルを握る必要がなくなれば、アップルカーを作らずとも、アップルの製品やサービスを提供する機会が増える」とキムは話す。
アメリカ人ドライバーは、毎日平均100分間を車内で過ごすという。「アップルが、運転する必要のなくなったドライバーをターゲットにするのは、戦略的に理に適っている」と彼は言う。
アップルに限らず、自動車メーカー各社は、車内向けコンテンツの提供に力を入れている。その背景には、高コストな電気パワートレインへのシフトによって利益が一層圧迫されたり、ライドシェアサービスの普及で車が売れなくなることに対する危機感がある。
イーロン・マスクがテスラの最新動向を頻繁にツイートするのとは対照的に、アップルのティム・クックCEOは、自動運転技術を含む新製品の計画について無言を貫いている。ティム・クックは昨年、自動運転プログラムに関する質問に次のように答えた。
「子供の頃、クリスマス・イブにワクワクした経験が誰にもありますよね。しばらくはそんなクリスマス・イブの状態が続くと考えてください」
クックの言う“クリスマス・イブ”状態は、現在も続いている。