職場を去る社員が「断りようがないオファーをいただきましたので」というありきたりの説明をすることが非常に多いのは、それ以上の本当の退職理由を明かすメリットが全くないからだ。
もちろん裏には「断りようがないオファー」以上の何かがあるわけだが、社員のニーズを無視したり、ありがたみを忘れたり、堂々と不当な扱いをしたりしてきた会社には、本当の話を知る資格などない。
こうした雇用者は、社員から無料のコンサルティングを受ける機会を逃している。社員が勤務する間、話を聞く機会はいつでもあったのだ。
職場における最大の問題の一つとして、社員が会社に言いたいことと、上層部が聞くに堪え得ることの間に立ちふさがる透明な壁がある。
社員の意見に耳を貸さない企業は、従業員にとってすぐに分かる。上司が自分の意見に興味がないと直感的に感じれば、他の仕事を探す以外の選択肢はないだろう。社員の存在や考えを評価しない組織で働くことはできないし、そんな組織で働くべきではない。
優秀な社員は退職するとき「素晴らしい仕事のオファーが思いがけず舞い込んできた」と言い訳するが、これを信じる人は、とんでもないお人よしだ。
転職活動は面倒なので、誰も進んでやりたいとは思わない。避けられるものなら、上司の悪行や人事の厳しい方針も目をつぶり、できるだけ今の職場で続けようと努力するものだ。しかし数々の侮辱や中傷が時間をかけて蓄積されると、転職活動を始めざるを得なくなる。
例えば12月に上司から、1月付の大幅な昇給と人もうらやむ職務への配置を約束されたとする。1月になると上司はそれを撤回し、昇給は2017年の目標達成状況に合わせて3段階に分けることになった。上司は謝ることもなく「私が決めたことではない」と言い、まるで社員の方が何か悪いことをしたかのようにいら立ち始めた。
2月になると新たな職務の話も撤回され、そのポストは他の社員の手に渡った。上司は「柔軟に対応する必要がある」と言った。3月、会社の都合で家族休暇を2回連続で延期する羽目になった。さらに、上司の失敗の後始末で夜中まで働いた翌朝、20分遅刻して叱責を受けた。
こうなればやるべきことは一つ。いやでも転職活動を始めるしかない。