ボルボの「安全神話」が受け継がれる理由[クルマの名鑑vol.8]

photograph by Tsukuru Asada (secession)

ボルボといえば、”安全神話”のイメージがグローバルで浸透している。

実際、アメリカでは家族を愛する"ファミリーマン"の選択として定評があり、英国でも子育て世代の支持が高い。しかしながら、年産50万台程度と、世界でも稀にみる小さな自動車メーカーにもかかわらず、これほどブランド・イメージが広く浸透しているのは稀だ。

その理由は、元々頑丈なスウェーデン鋼を使っていたことに加えて、創業者のアッサル・ガブリエルソンとグスタフ・ラーソンの「車は人によって運転され、使用される。したがって、ボルボの設計の基本は、常に安全でなければならない」という哲学を連綿と受け継いでいるからだ。

加えて、企業規模の割に思い切った投資をすることでも、先進性を保っている。1990年代には衝突安全試験施設を含むセーフティセンターを設立し、年間300回以上の衝突テストや、数千回のシミュレーションを実施。最近でも、この動きは鈍っていない。

2012年以降、スウェーデン産業界で史上最大規模の110億ドルを超える投資を行い、SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)やVEA(ボルボ・エンジン・アーキテクチャー)などを開発。SPAは安全性の向上や、電動化や自動運転にも対応する将来を見据えたプラットフォームであり、VEAはパワフルな走りと燃費性能を両立する新世代エンジンだ。

この両方の最新技術を搭載する「S90」は、ボルボの哲学を最上級に表現した最新モデルである。2014年には世界初の大規模実証試験センターである”アスタゼロ”のパートナーとなり、2016年にはUberと共同で3億ドルの投資を行い自動運転車の共同開発を宣言した。

世界でもまれに見る小さな自動車メーカーだが、その志の高さと変化への対応という点でボルボは最先端を走っている。



DATA
駆動形式:電子制御AWDシステム
全長:4965mm
全幅:1890mm
全高:1445mm
最高出力:320ps/5700rpm
価格:8,420,000円(税込)
問い合わせ:ボルボ・カー・ジャパン(0120-55-8500)

一般ユーザーに協力をあおいで進む、ボルボ独自のユニークな自動運転研究プログラム



自動運転の技術開発に関するウーバーとの提携で、ボルボは自動運転車のベースとなる車両の製造を担当する。すでにウーバーの自動運転開発拠点のある米ピッツバーグでは、自動運転車による実証試験がスタートしている。

続いて、2017年のデトロイト・ショーでは、実際の生活を想定した自動運転研究プログラム「Drive me」をスウェーデンの公道で開始することを発表した。自動運転車を一般のユーザーに貸し出し、公道で走らせることで、実際の生活を想定した自動運転研究プログラム「Drive me」を実施するという、非常に先進的で意欲的なプログラムだ。

創業者たちの言葉の通り、自動運転の時代になっても、あくまで「人」を中心に据えた使い方を基準に、人間の生活を豊かにし、安全であることを想定しているのが、ボルボのぶれないところであり、「ボルボ=安全」というグローバルなイメージにつながっているのだ。

text by Yumi Kawabata、edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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