仮想通貨でVC業界を破壊する「ブロックチェーン・キャピタル」の襲撃

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ベンチャーキャピタル「ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)」の共同創業者であるBrock Pierceは、1990年代後半から仮想通貨に慣れ親しんできた。彼は、ビデオゲーム「Sanctum」のファンで、ゲーム専用のバーチャルカードを熱心に集めていたという。

「バーチャルカードには価値があった。世界中のプレーヤーと対戦することができ、物理的なカードを保有する以上の満足感が得られた」と彼は話す。

バーチャルアイテムの事業可能性に気が付いたPierceは、中国で40万人を雇い、刀や盾、馬といったゲーム内アイテムを獲得して販売するビジネスを始めた。時間を節約したいゲーマーたちは、こぞってPierceの会社からアイテムを購入したという。その後、彼はゴールドマンサックスから8000万ドルの出資を得た。Pierceによると、彼の会社が取引きを行っていた市場の数が、ゴールドマンの為替トレーディング部門が管理している市場の数を上回っていたことが高く評価されたという。

こうした経験が元となり、PierceはBart StephensとBrad Stephensの兄弟と共にブロックチェーン・キャピタルを設立した。同社は、新しい仮想通貨を一般投資家に販売して資金調達を行う「イニシャル・コイン・オファリング(Initial Coin Offering、ICO)」という手法でファンドを組成した初めてのVCとなった。

同社は最近、5000万ドルの3号ファンド「Blockchain Capital III Digital Liquid Venture Fund」を組成した。このうち4000万ドルはリミテッド・パートナーから調達し、1000万ドルは市場での取引きが可能な「BCAPトークン」という独自のデジタル通貨を販売するICOにより調達した。ICOは4月10日実施され、1000人の投資家(99人は米国の裕福な投資家で、901人は海外の一般投資家)がBCAPトークンを購入した。一般投資家は、年収や資産額に関わらず誰でも購入できるが「know your customer(本人確認)」手続きが求められる。

仮想通貨による資本市場が形成される中、新たな投資銀行も登場している。その一つがArgon Groupだ。同社のCEO、Stan Miroshnikは「ICOを発展させる上で起業家と投資家を繋いだり、規制対応をサポートする投資銀行の存在が不可欠だ」と考えている。

「変化を停止した」VC業界は淘汰される

「ICOを目指すスタートアップの多くでは、エンジニアチームがプロダクト開発を休止し、何か月もの時間をかけて法規制について調査をしたり、投資家を探したり、スマートコントラクトを作成している」と彼は話す。Argon Groupは、これらの業務を代行するサービスを提供しており、ブロックチェーン・キャピタルは最初の顧客だという。ブロックチェーン・キャピタルの取組みは非常に先進的だ。

「VCは、革新的で破壊的なビジネスに投資をしながら、自らを変革しようとしない。VC業界は、いずれテクノロジーの進化によって中抜きが生じ、破壊的な変化が生じるだろう。変化が起きるのを待つよりも、自分から先に仕掛けたいと思った」とPierceは話す。

編集=上田裕資

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