オランダの研究チームは、関係があると考えている。エラスムス大学ロッテルダム経営大学院の最近の研究により、前日の夜によく眠らないと、翌日の職場での振る舞いに悪影響が出ることが明らかになった。
ただ、影響を受ける人は限定的であり、これまで勤務態度が完璧な社員はおそらく心配ない。一方で、職場で好ましくない振る舞いをしたことがある社員は、眠りの質が悪い日の翌日も再び似た行動を取る傾向があることが示された。
睡眠不足の大きな代償
その代償は時に大きい。規定より長く休憩を取る、許可なく早く帰る、果ては他人の物を盗むといった問題行動による損失は、米国のみでも年間最高2000億ドル(約22兆円)に上ると推定されている。
科学的な見地からは、職場での問題行動の多くは、利己的な衝動が自制によって抑制できないことで生じるとされる。睡眠の質が悪いと、倫理的な判断力が弱まるため、特に「モラル・アイデンティティー」(道徳的な人でありたいと思う気持ち)が低い人には、強い悪影響をもたらす。
「上司に伝えずに早く退社したい衝動には誰もが時に駆られるが、常にその衝動に負けるわけではない」とロッテルダム経営大学院の研究者、ラウラ・ジュルジェは言う。「衝動に屈した場合、後で良心のとがめを感じ、次回から行動を改めようと努めることが多い」
「よく眠れないと、衝動を管理するこの能力が徐々にむしばまれることが分かっている。睡眠時間だけでなく、睡眠の質も関係がある」
睡眠と問題行動を調査
研究では、働く人々を対象に、毎日どの位よく眠れたか、好ましくない行動を取ったかについて、10日間連続で聞いた。問題行動には、規定よりも長く昼休憩を取ったか、同僚に対して失礼な態度を取ったかなどが含まれる。
分析の結果、前日の睡眠の質は概して、翌日の行動に影響を及ぼすことが分かった。また、前日に問題行動を取った人は、特にその夜の眠りの質が悪いと、翌日も再び問題行動を取る傾向がみられた。
「この研究は、好ましくない行動は固定された性格によるものではないことを示している」とジュルジェは説明する。
「同じ人でも、日によって異なる。それ(好ましくない行動)がどんな理由で始まったにせよ、夜によく眠っていないと、やめるのが難しくなる。モラル・アイデンティティーの低い人の場合は特にそうだ」
「疲れていると、良識ある道徳的な人間としての行動を取れなかったという気持ちを乗り越え、次の日に同じことを繰り返さないように努力することが難しくなる可能性があるとみられる」
「これは破壊的なサイクルにつながる恐れがある。このサイクルは、非倫理的な行動が一部の組織でなくならない理由を説明する一助となるかもしれない」