若手デザイナーを発掘
同社のソーホー店は、数多くの若手ブランドの商品を扱っている。いずれも毎月200を超える応募の中から、質の高さやメディアに訴える魅力、次世代のファッション界のスターとなり得る資質を基準に選んだブランドだ。
店舗の運営、家賃、人件費を負担する代わりに、ウルフ&バジャーは各ブランドの売上高の20%を手数料として徴収する。商品は店舗に3か月間置いた後、ネット販売向けとする。
当然ながら、新しいブランドにとって委託販売は最も理想的な売り方ではない。小売業者に在庫として買い取ってもらう方が、短期間に生産コストを回収することができる。だが、小売業界は前述のような状況だ。ウルフ&バジャーのような店を通じた販売方法を選ぶ新進のブランドは増えている。
ウルフ&バジャーもそうした業界の流れに乗る店の一つではあるが、無名のデザイナーが作る最先端のファッションを取り上げることに力を入れていることが特徴だ。それが熱心なファンの獲得につながり、ファッション・エンターテインメントの世界で名を知られる人たちからの強い支持を得ることにもつながった。
ヘンリーによれば、流行を生む側でいたい有名人たちの多くが、兄弟の店を利用してくれるのだという。「僕らの店では写真映えのする、メディアで取り上げられる価値のある商品を数多く取りそろえている。それも、まだ他のどの有名人も着ていないブランドの服がほとんどだ」
英国出身の歌手リタ・オラやモデルのカーラ・デルヴィーニュをはじめとするインフルエンサーが身に着けてくれることは、高級品を扱うブランドにとって最大のマーケティング戦略の一つだ。その戦略を維持していることが、ウルフ&バジャーが若いデザイナーたちを先導する存在になった主な理由だろう。