エスティ ローダーはユーカム メイクアップのアプリを導入することで、パーソナライズした「オンラインとオフライン双方の経験」を顧客に提供。それにより、実店舗で買い物をしたいより多くの若い世代を引き付けることを目指している。
同社の北米地域での業績はこのところ減速傾向にあるが、その原因は米国内の百貨店(高級チェーンを除く)の多くが、客足の減少に苦しんでいることの影響と見られる。
だが、コンサルティング企業アクセンチュアが3月上旬に発表した調査結果によれば、電子商取引の規模が拡大を続ける一方で、ミレニアル世代の多くは現在でも、実店舗での買い物の方を好むという。また、少なくとも一部の商品カテゴリーについては、(ミレニアル世代より若い)Z世代の消費者の77%が、実店舗での購入の方を好むという結果が示された。エスティ ローダーはこうした「矛盾する」傾向の中に、興味深い新たな販売方法を見つけたといえそうだ。
オムニチャネル経験を提供
エスティ ローダーは今回の提携を通じて、ブランドとの接点となる複数のチャネルを融合させたオムニチャネルの経験を顧客に提供できるようになる。消費者は店舗で実際に商品を手に取ったり試したりすることを、モバイル機器を通じて経験できるようになるのだ。ユーカムのアプリのダウンロード数はこれまでに、世界全体で4億前後に上っている。
ユーカムのアプリを使えば、エスティ ローダーが先ごろ発表した30色をそろえた「ピュアカラー ラブ リップスティック」の全色を、購入前に試してみることができる。一部の店舗にはアプリの使い方を説明するための店員を配置するが、店内に設置するユーカムのマジックミラーでも、消費者は自ら商品を選び、バーチャルに試してみることができる。
今後の化粧品販売にも影響?
数多くの化粧品ブランドが、ミレニアル世代の消費者たちとのつながりを強化するための変化を目指している。エスティ ローダーが採用したパーソナルな経験の提供は実店舗で実際に商品を試すことを促すものであると同時に、「消費者のネット上での存在感」を来店のきっかけに活用するものでもある。消費者とのやりとりを増すことで、販売数の増加も期待できる。
両社の提携が成果を挙げれば、エスティ ローダーは自社のその他ブランドにも同じサービスの導入を検討するだろう。他社ブランドも実店舗の客足の引き上げを狙い、同様のサービスを採用する可能性がある。