キャリア・教育

2017.04.20 15:00

100年人生「ライフシフト」のために本当に必要なことは?

石倉洋子・一橋大学名誉教授

石倉洋子・一橋大学名誉教授

2016年10月、六本木ヒルズ「アカデミーヒルズ」でこんな場面があった。2ヶ月間にわたって開催された石倉洋子・一橋大学名誉教授による、「グローバル・ゼミ」でのことだ。

「自分が100歳になったときに、このゼミの同窓会が開かれることになった。そこで100歳になるまで自分がどんな人生を歩んできたか、現在は何をしているかなどを英語でスピーチしなさい」

これが石倉教授からの課題である。

さて、あなたは100歳になったときの自分が何をしているか、想像したことがあるだろうか? おそらく大半の人は考えたことはないだろう。5年後のことだって、考えるのは難しい。石倉教授が「100歳」という課題を出したのは理由がある。

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの二人の教授による共著でベストセラーとなった『ライフシフト』は、人間の長寿化を指摘している。いま50歳未満の人、特に長寿国の日本人は、100年以上生きる「100年ライフ」となる可能性が高いと説いている。

フォーブス ジャパン編集部は、アンドリュー・スコットとリンダ・グラットンにそれぞれインタビューを行った。リンダ・グラットンが100歳時代に適応するための3つのポイントをこう話す。

「一つ目は従来と違う考え方をしなければならないということです。これまでの人生は、“学校で教育を受けて”“会社で仕事をして”“引退”という3つのステージで人生を分ける考え方が主流でした。しかし、100年時代には、人生をマルチステージ化し、過去のロールモデルやこれまで有効だったキャリアの道筋、人生の選択が役に立たなくなります」

社会人が学校に行ったり、地域活動をしたりする割合は、OECD諸国で日本はかなり低い。早くから生き方を複線化することで、長い引退期間を充実させるべきだという。

続いて、二つ目のポイントについて、こう言う。

「資産についての考え方です。資産というと、お金など目に見えるものに目がいきがちですが、同じくらい大切なのが目に見えない、スキル、健康、人間関係といった無形資産です。100年時代という長い人生を幸せで生産的なものにするためには、金銭面との相乗効果を生み出すことが重要なのです。

最後は『変化』が当たり前になることを理解すること。生涯を通じ、変身し続ける覚悟をもたなければなりません。そのためには自分自身を知ること、自分とは異なるロールモデルと接することが大切です。また今後は、必要とされるスキルの価値が瞬く間に変わっていきます。自身のもっているスキルを常に見直しながら、再構築し続けることが肝要です」

さて、冒頭の石倉洋子教授の「グローバル・ゼミ」最終講座。100歳時の課題について受講生に発表をさせるのかと思っていたら、突然、「皆さんのグループで起業をするとしたら、何をするか、20分で考えなさい」という指示が出たという。

では、「100歳」の課題は何だったのか?

実は、100歳時の世界環境、政治経済、テクノロジー、あらゆることを想定して、自分がそのとき何をしているかを考えると、自分の強みや自分の活かされる経験が何かを認識できる。そのうえで、「起業」を考えると、自分のもつ個性を育てることになる。そう、100歳を想像することは、自分をイノベーティブにしていくことにもつながるのだ。

アカデミーヒルズで開かれる石倉教授の「グローバル・ゼミ」は、英語による議論が求められる。レベルは高いが、このゼミからビジネスも生まれている。また社会起業家が輩出されたり、社会起業家を応援したりするプロジェクトも誕生している。

フォーブス ジャパンWEB編集長の谷本有香は、同ゼミの一期生でもある。

「アメリカのビジネススクールなみの厳しさと言われていますが、ビジネススクールが20代中心なのに対して、グローバル・ゼミは大学教授も受講するなど、皆さんがバックグラウンドをお持ちです。世代、職業、知見など、異なる背景をもった方々と議論できる点が大きく違うのです」(谷本)

これこそ、リンダ・グラットンが言う100年ライフのポイントである。「自分と異なるロールモデルと接すること」。100年ライフを充実させるための大きな足がかりになるはずだ。


「英語を学ぶ」のではなく「英語で考える」、このグローバル・ゼミは4月26日(水)、六本木ヒルズで開かれる。

フォーブス ジャパンの読者を5名、無料体験にご招待します。
4月24日(月)正午までに下記からお申込み下さい。
https://form.mori.co.jp/form/pub/academy/gas2017presession

Forbes JAPAN 編集部

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事